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第5話

 翌日は、休日だからと優木(ゆうき)は昼近くまで眠っていた。  それより先に起きた小敏(しょうびん)は、ぐっすりと眠り込む恋人の寝顔を見て、ニッコリした。 (大好き、大好き、大好き!)  昨夜の優木は素晴らしかった。百戦錬磨の小敏さえ戸惑うほど、熱く、激しく、愛情深く、優木は朝まで抱いてくれた。小敏は、優木から与えられた愛が嬉しくて、何度も歓喜の声を上げ、快感が突き抜けて涙を零した。  心を満たし、体を満たしてくれる、この世でたった1人の、大切な恋人…。  小敏は、この、イケメンとはほど遠い平凡な顔立ちで、体も緩み、オシャレでも無く、ずば抜けて仕事が出来るわけでも無く、ただひたすら温厚で、人が良く、誠実で優しい恋人と出会えたことが、人生で最高の奇跡だと思った。こんな奇跡を手に入れた自分の幸運が嬉しかった。 (ずっと、ずっと優木さんと一緒にいるんだ~。それだけで、ボクの人生は充分…)  夢を見ているのか、優木はなぜか口をモグモグした。 (お腹空いた?)  優木の寝顔を、小敏はもう一度笑った。 (ご飯、作ってあげたら喜ぶかな~)  ベッドの上で腹ばいになり、両手で頬杖をついている小敏は、足をバタつかせ、誘惑的な小悪魔だ。それを惜しげも無く晒し、眩しいほどだというのに、それを好きなだけ観て、触れることを許されたはずの恋人は、泥のように眠っている。  それを確かめ、小敏はそっとベッドを抜け出した。 ***  いつまでも、恋人の熱烈な求めに翻弄され、慣れずに泣き出すことも多かった煜瑾だが、最近は少し落ち着いてその情熱を受け止めることが出来るようになった。 「ふふふ…」  心地よいベッドの中で、愛しい文維の胸に抱き留められながら、煜瑾は笑った。 「どうしました、煜瑾?」  先ほどまでの行為のせいか、文維の声はいつもに増して甘く艶めかしい。そんなセクシーな声にうっとりしながら煜瑾は答えた。 「私は、文維さえいてくれたら、他には何もいらないと思って…」  無邪気で愛らしいことを言う恋人に、文維は腕に抱え直し、白い頬に口付けた。 「じゃあ、朝ご飯はいらないのですね?」 「もう、文維はイジワルです!」  からかう文維の胸板を叩き、煜瑾は起き上がった。 「朝ご飯、作りましょうか?」  文維が尋ねると、煜瑾は高貴な美貌をさらに輝かせる。 「じゃあ、先にご褒美をいただきますね」  そう言って文維は煜瑾を引き寄せ、深い口づけをした。

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