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第8話
休日の昼近くに目覚めた優木 は、ベッドの中に愛しい小敏 が居ないことを少し寂しく思った。
ゆっくりと起き上がると、体のあちこちが痛んだ。
(やっぱり年かな…)
優木は、ウンと1つ伸びをして、脱ぎ捨ててあったパジャマを着た。ベッドを降り、寝室を出ると、そこは明るく広々としたダイニングキッチンだ。
キョロキョロと優木は周囲を見渡すが、そこに小敏の姿は無かった。
「痛いっ!」
腰の上部に痛みを覚え、優木は焦った。
(腰はマズいな…。小敏に…応えられなくなる)
優木は本気で、小敏との激しい営みを重視している。自分の欲望も大切だが、何よりも、あの奔放で淫乱な小敏を満足させられなければ、この関係が終わってしまうのでないかと不安になっていた。
(ジムにでも行って、ちょっと体力を付けておこうかな~)
そんなことを考えながら、優木は冷蔵庫から、最近、小敏が気に入っているフルーツ味のヨーグルトドリンクを取り出した。そのプラスチックの瓶の蓋を開けながら、優木はリビングに移動し、腰を下ろしてテレビを点けた。
テレビを観ながら、イチゴ味のヨーグルトドリンクを飲み、優木は小敏を待っていた。
「あ…、この人…」
その時、食品会社のCMが始まり、そのイメージキャラクターに優木は見覚えがあった。
それは小敏の高校時代の後輩で、プロのサッカー選手だったが、つい最近、引退したのだと言う。
「カッコイイよな~」
若々しく、キリリとした男らしい顔立ちで、それでいてどこか寂し気な、母性本能をくすぐるようなイケメンだ。選手は引退したものの、まだまだその人気は高く、今はモデルやCMタレントのようなことをしている。
「ただいま~」
玄関で声がした。明るく、よく澄んだ、可愛い小敏の声だ。
「お帰り~」
声を掛けると、玄関からの廊下を小敏が駆けてくるのが分かった。
「ドコ行ってたの、シャオミン?」
優木が笑顔で迎えると、小敏はそれ以上に陽気な笑顔で現れた。
「起きてたんだね、優木さん」
そう言う小敏の手にしたものを見て、優木はさらに笑ってしまった。
「朝飯 かい?」
「うん!」
小敏が買って来たのは、近くにある昔ながらの朝食を出す小さな食堂で人気の、豆乳スープとお粥だった。
「たまには、優木さんにラクさせてあげなきゃね」
茶目っ気たっぷりな小敏だが、その眼は優木に甘えるばかりではなく慈しんでいるのが分かる。
「本当に嬉しいよ、シャオミン」
誠実で、優しい笑顔で優木は微笑み、両腕を拡げて小敏の体を受け止めた。
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