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第11話
朝食中に、抑えきれなくなり、優木 と小敏 は寝室に戻った。
「ふふっ。ここは?」
「よしなさい、シャオミン。くすぐったい…」
ベッドの上で、互いの弱点を探るように触れ合い、優木と小敏は楽しそうに笑っていた。
しばらくして、急に小敏はギュッと優木に抱き付いて、うっとりとして言った。
「優木さんは、いつでも温かくて、柔らかくて、気持ち良くて…大好き」
「シャオミンのほうが、気持ちいいカラダだよ」
2人は顔を見合わせて、もう一度キスをして、嬉しそうに微笑み合った。
「ずっと、ずっと、一緒に居てね」
なぜか心細げにする小敏が気がかりで、優木は恋人を引き寄せた。
「それを言うのは、俺の方だよ。せいぜいシャオミンに捨てられないように頑張りたい」
そう言って、宥めるように額に口付けようとした優木を、小敏は拒んだ。そして少し怒ったように言った。
「やだな、ボクが優木さんを手放すわけない!」
そうだ。
小敏が自分から優木を手放すはずがなかった。ただ、あるとすれば、2人の仲に不満を持つ誰かが、優木と小敏を引き離そうとすることだけだ。
それさえも、優木は乗り越えたと思う。
誰が何と言おうと、優木は小敏を自分の物にしておきたいのだ。
「俺だって…。こんなにキレイで、可愛くて、賢くて、魅力的な恋人を手放すはずないだろう?」
小敏に心配を掛けまいとして、優しく、冗談めかして言う優木に、小敏は急に深刻な顔をしていった。
「ウチのパパに言われたからじゃないよね?」
「な、何を言ってるんだよ、シャオミン!」
根が真面目な優木は、自分の誠意が疑われたことに慌てた。
もう生きてはいられないかもしれないという限界まで追い詰められ、それでも優木は小敏への想いを貫いたのだ。
たとえそれが小敏の父であっても、優木は自分には不相応とさえ思える最上の恋人を諦めるつもりは無かった。
そんな一途な気持ちを、優木は小敏に分かって欲しいと思っていた。それでも、不安な顔をした小敏が心配で、優木は笑った。
「君のお父さんが立派な人だと言うのは分かっている。でも、俺が好きなのはシャオミンだけで、パパまではお相手できないよ」
「優木さんってば!」
小敏は、ベッドの上を転がりながら大笑いした。それが、心から楽しんでいるのが見て取れて、優木もまた嬉しくなった。
「そうだ。小敏の誕生日、どうする?」
穏やかな表情はそのままに、優木は神妙な口調で訊ねた。
「どうって…。優木さんにご飯作ってもらって、いっぱいセックスして、いっぱい甘えさせてくれたらそれでいいよ」
「いやまあ、それは…普段と変わらないだろ?」
無邪気な小敏の答えに、実直な優木は困ってしまう。
「じゃあ、時計とか、服とか、靴とか買ってくれる?」
世慣れた小悪魔がとんでもないことを言うと、真面目なだけが取り柄な優木は、眉を寄せる。
「シャオミンが好きそうなのを買うなんてのは、俺の給料じゃ無理なのは分かってるだろう?」
2人は顔を見合わせて、またも楽しそうに笑った。
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