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第17話

 小敏(しょうびん)は、優木(ゆうき)が買って来た肯德基(ケンタッキー)フライドチキンを、黙々と食べていた。 「シャオミン、それ、何個目だよ?」  まだ1つ目のチキンも食べ終わらない優木は、呆れたようにキレイでカワイイ恋人に問いかけてみた。 「ヤダな~、まだ3個目だってば」  油でテカテカと光る唇が、どこか艶めかしい。そんな小敏に、優木は目を細めた。  目の前にある優木の、理想通りの恋人が愛しくてならないと言った顔つきが、今度は小敏を満足させる。 「ねえ、優木さん。海南島、いつ行く?」 「ん~、シャオミンの誕生日の7月3日の夜には、海南島のホテルに居たいとは思ってるけど…」  優木は、手にしたチキンを置いて、カレンダーを振り返った。 「じゃあ、7月になったらすぐに上海を発つのは?」  小敏のほうはチキンを手放すことなく、むしろもう1つ残っているのを目で確かめながら、ウキウキと楽しそうに言った。 「月の(あたま)の週末だなんて、管理職が有休を取れるわけないよ。なんとか、3日の昼には出発できるようにしたいけどな」 「けど、なんだよ」  ムッとしたように小敏が、その色気のある唇をキュッと尖らせる。それが意図的で、あざといのだが、なぜか可愛らしくて、優木は思わず抱き寄せ、油でギトギトの唇を奪った。 「優木さん、ちょっとしかチキン食べてないのに、ちゃんとチキンの味がするよ…。とっても、美味しい」  小敏は、嬉しそうにそう言って、今度は自分から積極的に、深いキスを恋人に求める。  そのまま、2人は重なって、並んで座っていたソファに倒れ込んだ。 「ねえ。優木さんは、ボクだけが好き?」 「ああ。キレイで、可愛くて、セクシーで、ちょっと悪い子なシャオミンが大好きだよ」  正直な恋人にご褒美を与えるように、小敏は熱烈な口付けを与え、腕や脚を絡ませた。 「あれ?」  急に小敏が動きを止め、優木の顔を覗き込んだ。 「優木さん、ちょっと痩せた?」  不思議そうな顔の小敏に、優木はニッと笑った。 「分かるか?最近、ウチのオフィスが入ってるビルにスポーツジムが出来てさ。1ヶ月無料キャンペーンなんで、時々通ってるんだ」 「ズルい~。ボクも行きたい」  そう言って少しスッキリした優木のウェストに腕を回し、小敏はギュッと密着して甘えた。 「海辺のリゾートで、シャオミンの隣で水着姿になると思ったら、頑張れた」  何事も恋人のためなら努力しようとする誠実な優木の姿勢が、小敏は大好きだ。 「嬉しいな。引き締まってカッコイイ優木さんとビーチへ行って、たくさん遊んで、美味しいもの食べて、夜はいっぱい愛し合うんだよね」 「疲れそうだな~」  優木が困ったように笑うと、その様子がおかしいと小敏は明るく、朗らかに笑い転げ、その笑顔が可愛くて、優木も嬉しそうになる。 「もう仕事なんて辞めて、ボクとのんびり海南島で暮らさない?」  小敏が夢見るように言うと、優木も遠くを見ながら呟いた。 「いいな。大好きなシャオミンと2人きりで、南の島でゆっくりと年を取るのも…」  その言葉を聞きながら、小敏は笑って体を起こし、Tシャツを脱ぎ捨てると熱っぽいカラダを優木に任せた。

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