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第31話【R18】

 小敏(しょうびん)は、優木(ゆうき)の上に座り込み、彼の怒張を奥深くまで体内に迎え入れた。 「あ…、あ、ん…、優木さ、ん…!ま、待って!」  経験豊富な小敏を(もっ)てすら、戸惑うほどの優木の激しい突き上げだった。巧妙で、力強く、逞しく、熱く、小敏は夢中になった。 「ダメ…、ダメ、そんなに…っ!そんなに、激しく…したら…っ!っあ…ん…ん…」  気が付くと、小敏も優木に同調して淫らに腰を揺すっている。  磨き上げたような、白く滑らかな肌も顕わな小敏が、背を反らせるようにして、見悶えていた。その腰をしっかりと掴んだ優木が、グッと引き寄せ、最奥で、今夜何度目かの終焉を迎えた。 「はあ…はあ…、も、もう優木さんって…、最近、スゴイ」  息を整えながら、自身も満ち足りた様子で、小敏は優木の胸の上に倒れ込み、そのままゆっくりと隣に身を横たえる。 「はぁ…はぁ…はぁ…。疲れた…」  息も絶え絶えといった感じの優木が、笑いながら腕の中の小敏を抱き寄せる。 「すごく良かったよ、優木さん。こんなに愛されて、ボク、幸せだよ」  紅潮した頬で、小敏は心から満足そうに笑っている。その幸せそうな笑顔が、優木には嬉しかった。  見た目が完璧に優木の好みで、自分や欲望に正直で、素直で、頭の回転が早く、ユーモアがあり、日本語が堪能で、優木のような冴えない中年でも心から愛してくれる、最高にカワイイ恋人だ。  優木の平凡な人生において、これまで思いも寄らなかった天からの素晴らしい贈り物である、羽小敏という恋人を得て、全ての幸運を使い切ったかのような気がしていた。 「ん…。俺、もうすぐ死んじゃうんじゃないかと思うよ」 「何言ってるのさ」  小敏は呆れて、声を上げて笑った。 「人間は、死期が近付くと、自分の遺伝子を残そうとして性欲が高まるらしいぞ」 「だからって、ボクといくらセックスしたって、遺伝子は残せないよ?」  最近の欲求の高まりを優木は自覚していた。それはもしかして、ジムで鍛えたためにこれまで以上に体力が付いたせいかもしれないし、目の前の小悪魔が愛しくてならないからかもしれなかった。 「そんな縁起の悪い考え方より、ボクがセクシーだから夢中だったってことでいいんじゃない?」  そう言って小敏は、ソッと優木に口付けた。 「そうだな。俺はシャオミンに夢中だ…」 「でしょ?」  2人は明るく微笑み合い、幸福を味わうかのようにしっかりと抱き合った。互いの体温が心地よくて、嬉しくて、ただ幸せだった。 「ねえ、優木さん」  小敏は、静かで穏やかな口調で呼びかけた。 「ん?何だい?」  それに応える優木の声も、表情も、仕草までも、何もかもが優しくて、穏やかで、小敏を心から安心させる。  それなのに、なぜか小敏は急に不安になる。  もしも…。  もしも、本当にこんなに安らぎを与えてくれる恋人を失ってしまったら、自分は1人で生きて行けるのだろうか…。  あまりにも素晴らしい恩恵を手に入れてしまったがゆえに、それを失った時の、もしくは奪われた時の恐怖が小敏を襲った。  ギュッと優木の胴に腕を回し、小敏は暗い想いを振り切るように、思い切り明るく言った。 「海南島、楽しみだね!」

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