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説好不哭~泣かないと約束したから~【上海後編】 第49話 | 荷蓮花の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
説好不哭~泣かないと約束し...
第49話
作者:
荷蓮花
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49 / 172
第49話
文維
(
ぶんい
)
と
煜瑾
(
いくきん
)
は、何も言わずに煜瑾のお気に入りのソファの上で抱き合っていた。言葉は必要ではなく、ただ互いの温もりだけで思いが伝わるようだった。 しばらくはそうしていたが、やがて文維が身じろいだ。 「文維?」 何も疑わない
無垢
(
むく
)
な瞳で、煜瑾が問いかけると、文維は困ったように笑った。 「さあ、そろそろ私は、自分のアパートに戻ります」 「ダメ!ダメです!いけません!」 文維の一言に、煜瑾は反射的に叫んでいた。 「…煜瑾」 愛しい恋人の悲しげな表情に、文維の胸が痛む。そんな文維の気持ちを知ってか知らずか、煜瑾は放すまいとして、ギュッと文維のオフホワイトのサマーニットを掴んだ。 そんな
健気
(
けなげ
)
な煜瑾に、文維は欲望を抑え込むことがますます苦しくなる。 「あの人がいた場所に戻ってはイヤです!」 煜瑾はその胸の中に顔を埋めて、イヤイヤをしながら、何度も子供のようにしゃくりあげて泣いていた。 「文維は、あの人がいた、あの部屋に戻りたいのですか?」 泣きながら、煜瑾は
拗
(
す
)
ねたように言った。こんな風に、天使のような恋人に責められたのは、文維にとっては初めてだった。 煜瑾を大切に思う兄・
唐煜瓔
(
とう・いくえい
)
から、文維は唐煜瓔以上に煜瑾を大切にすると約束させられていた。穢れを知らない純真な心の煜瑾に、悪い心を教えないと、悲しい思いをさせないと約束した。 それなのに、優しく繊細な煜瑾を傷つけ、苦しめ、泣かせてしまった自分を、文維は情けなく思う。 「煜瑾…。私は…」 言いかけた恋人に、煜瑾はゆっくりと体を離し、ジッとその深い色をした黒瞳で文維を見つめた。その物憂げな美貌が悩ましい。 「ゴメンなさい…。こんなワガママを言って。…でも…、私は文維が好きなのです。文維には、私だけのものでいて欲しいのです」 「……」 一途な瞳の煜瑾を、直視することが出来ずに、文維は顔を背けた。そんな文維に、煜瑾は拒絶されたと感じてしまう。 「文維を拒んでおきながら、こんな事をいう私は…悪い子ですね…」 煜瑾は、しっかりと握っていた文維のサマーセーターから
名残
(
なごり
)
惜
(
お
)
し気に手を放した。今度は、煜瑾を失うような予感に、文維の方が焦る。 「煜瑾は、悪くありません!私が、君をそこまで追い込んでしまったのですから…」 文維から少し離れ、煜瑾は切ない表情で、心細げに呟いた。 「文維…。今夜は、ここに泊まりたくないのですね…」 自分1人を残して、
宋暁
(
そう・しょう
)
との「思い出」が残る部屋へ帰ろうとする恋人に、煜瑾は傷付いていた。 煜瑾は、文維から見捨てられたのではないかと自信を失ってしまう。 文維に愛されて初めて「
快楽
(
セックス
)
」を知った煜瑾は、無知な自分が文維を満足させられないのではないかと、いつでも不安を感じていた。
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荷蓮花
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