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第5話
1ー5 お嫁にいくんですか?
僕は、自分が異世界からの転生者だということを思い出した。
以前の僕は、異世界で普通に暮らしていたサラリーマンという職業の人間らしい。
普通、このロミリアム王国では転生者は、女神の教会によって保護されることになっている。
僕は、母様から離れたくなかった。
その頃には、すでに母様は病に倒れていたから。
僕は、自分が転生者であることを秘密にすることにした。
以前の僕は、どうやら薬剤師として会社で働いていたらしく、僕には薬の知識があった。
僕は、母様のためにいろいろな薬を試してみた。
だけど、母様の体調は変わらず、今では1日のほとんどを床につくようになっていた。
アナハイム家の人々は、僕たちを追い出したがっていたが、僕は、1人でがんんばって母様の分まで働いてどうにかこの家に置いてもらっていた。
ぼろぼろのみっともないドレス姿でクルネズミのように働く僕をみんなバカにして『灰かぶり』と呼んだ。
僕は、この世界では珍しい黒髪に黒い目をしていたので僕を手元に置きたがる貴族もけっこういたのだが、アナハイム辺境伯がそれは、許さなかった。
いわく、アナハイム家の血をもつ男子がよその家で飼われるなど認めることはできないとのことだった。
そのため、僕は、20才になるまで家の外に出ることもなく暮らしてきた。
そのため世間では、僕のことを『アナハイムの灰かぶり姫』と噂されているらしい。
あまり美しくないために隠された姫と言われている僕には婚約したいという者もなく、僕は、一生をこのままアナハイム家の奴隷として暮らすのだろうと思っていた。
この日までは。
もと勇者の悪魔と呼ばれる男爵が帰った後で僕は、アナハイム辺境伯に呼ばれて彼の執務室へといった。
父であるこの人に呼び出されるなんて初めてのことだ。
僕は、少し緊張していた。
産まれて初めて僕を見てくれた父は、僕にこう命じた。
「喜ぶがいい、『灰かぶり』お前を嫁にと望む者が現れた」
はい?
僕は、何が何やら理解できかねた。
僕は、女の子の格好をしてるけど男だよね?
嫁にはなれないんじゃね?
僕が問う前に父は答えた。
「お前には、1ヶ月後にグールド・ワイエス男爵のもとに嫁いでもらう。わかったな?『灰かぶり』」
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