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第6話

 1ー6 ソー   そういうわけで僕は、初夏頃にはグールド・ワイエス男爵、別名悪魔男爵のもとへと嫁ぐことになった。  僕には、拒否することも許されなかった。  ただ、唯一の救いは、悪魔男爵が僕と一緒に母様も引き取ってくれるということだった。  アナハイムの家を出ていく日、僕と母様を見送ってくれた者は、1人もいなかった。  僕らは、誰にも見送られることなく長年暮らしたアナハイムの家を後にした。  嫁ぐといっても僕には、ほとんど荷物もなかったし、それどころか持参金すらなかった。  僕と母様が持っていくことを許されたのは、身の回りの衣類とかだけだった。  それと一匹の黒猫。  この猫は、僕が魔女の森で拾ったことになっている。  名前を『ソードフィッシャー』といった。  普段は、ソーと呼んでいるその黒猫は、実は、ただの猫ではなかった。  これは、母様にも内緒なのだが、ソーは、僕が魔女の森で拾った剣だ。  僕は、時々、母様の薬のために魔女の森に入っていた。  そこにしかない薬草をとるために。  そうして、あのダンジョンを発見したのだ。  それは、魔女の森の中にあった。  パッとみたところなんの変哲もない洞窟にしか見えなかったが、そこは、ダンジョンの入り口になっていた。  僕は、そのダンジョンの中にはえていたエンダケキノコを採集していてソーと出会った。  ソーは、このダンジョンに封印されていたようだった。  ソーを封印したのは異界の魔女だ。  なぜ、魔女がソーを封印したのかは僕にはわからない。  だがその封印を僕が解いてしまった。  「我の眠りを覚ましたのはお前か?」  光輝くその剣は、僕にきいた。  「我の新たなる主よ、何を望む?」  望み?  僕は、頭を傾げた。  僕には、なんの望みもなかった。  だって、こんな僕が何を望める?  僕は、恐怖に息を飲んだ。  ソーは、暗い洞窟の中で美しく輝いていた。  僕は、とっさに願った。  「母様の病気を治して」  「我には病は治すことはできぬ。ただ、主の母君が死なぬように守ることは可能だ」  だけど、剣のままだとそばに置いておくことが難しかった。  そこで、ソーは小さな猫に姿を変えた。  「これならよかろう?」  こうしてソーは、僕の家族になったんだ。

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