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第7話

 1ー7 どうしちゃったの?  アナハイム辺境伯領から隣のワイエス男爵の領地までは馬車で3日ほどの距離だった。  僕は、ガタゴト揺れる馬車の中で母様の体調が悪化しないようにと馬車を風魔法で少しだけ浮かして走らせていた。  御者に気づかれないように。  でも、母様は、さすがに気づいていた様で、僕にすまなそうに微笑んだ。  僕は、延々と続く荒野と灰色の空にこれからの僕たちの未来のことを思い気分が沈むのを感じていた。  僕の浮かない顔に気づいた母様は、僕にそっと囁いた。  「嫌なら今のうちにお逃げなさい、ルーシェ」  母様は、僕に告げた。  「これは、アナハイム辺境伯の嫌がらせよ。あなたがあの悪魔のもとに嫁がなくてはならない理由なんてないんだから」  「母様」  僕は、母様に向かって頭を振った。  「僕は、逃げないよ」  「どうして?」  母様が僕に訊ねた。  「女の子として育てられたとはいえ、あなたは男なのよ、ルーシェ」  うん。  僕は頷いた。  確かにそうなんだけど。  でも、僕たちがあのアナハイムの家から自由になるにはこの方法が一番いいから。  僕たちが2人で家を出たとしてもきっと僕だけでは母様を守ることができないに違いない。  だから。  僕は、母様ににっこりと微笑んで見せる。  「男爵は、ほんとは優しい、いい人だよ、母様」  僕は、母様を心配させまいと無理して必要以上に笑顔を作った。  「だって、男爵は、偉い人なのに僕の仕事を手伝ってくれたし」  それに。  僕は、ぎゅっと自分の手を包み込むように握った。  男爵は、魔法で僕の手の傷を治してくれた。  あのときのことを思い出して、僕は、頬がかぁっと熱くなるのを感じていた。  あのとき。  男爵にキスされた指が、手のひらが、熱く火照る。  どうしちゃたの、僕?  こんな。  胸がどきどきして。  変、だ。  相手は、悪魔で、しかも男なのに!  「ごめんなさいね、ルーシェ」  母様が涙ぐみうつむく。  「私がいるせいであなたを苦しめている」  「母様!」  僕は、母様の手をとり微笑んだ。  「そんなことない!僕は、本当にあの男爵なら好きになれるって思ったんだよ!」    

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