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第10話

 1ー10 家  まあ、あそこが目的地とは限らないし。  僕は、心をおおってくる不安を払うかのように頭を振った。  だけど、だんだんと馬車はそのお化け屋敷みたいな家へと近づいていく。  僕の胸は、別のどきどきを感じていた。  違うよね?  あのボロボロの家が男爵の屋敷とかじゃないよね?  まさかね。  僕は、ふっと笑った。  だって、悪魔とか呼ばれててももと勇者だよ?  魔王を倒した英雄だし。  まさか、あんなお化け屋敷もどきに住んでたりはしないよね?  きっと、もう少し行った先に町があってそこに立派なお屋敷があるんだよね?  僕は、そう思っていた。  でも、馬車は、確実にその屋敷へと向かって進んでいるようだった。  マジですか?  いや、ないない!  僕は、ははっと笑った。  仮にも男爵位の人の住んでる家だよ?  あんなボロボロの家のわけが。  しかし、僕の思惑を裏切って馬車は、どんどんその屋敷へと近づいてく。  そして。  ついにその古い屋敷の前で馬車は停車すると、アナハイム家の御者は、馬車の扉を開いて僕と母様に降りるようにと告げた。  僕と母様が降りていいものかと躊躇しているのを見ると御者は、舌打ちして僕の手を掴んでっ引っ張り下ろした。  御者は、母様のことも馬車から下ろすとさっさと僕たちに背を向け去っていった。  僕と母様は、そのお化け屋敷みたいな崩れかけたようなボロいお屋敷の前に置き去りにされてしまって途方にくれていた。  「母様・・」  僕は、不安げに母様を見上げると視線をその屋敷へと向けた。  崩れかけたレンガの壁に緑の蔦が繁っている。  うん。  なんかすごく趣きがあるというか。  マジで、ここがワイエス男爵の家なの?  僕が立ち尽くしていると母様がくすっと笑った。  「なんだかよくわからないけど、あのアナハイムの家に住んでいるよりはこのお化け屋敷で暮らす方がよっぽど楽しそう」  それもそうだな。  僕もつられて笑った。  そうだよ。  あの家より酷いところなんてない。  僕と母様は、見つめあって微笑みあった。  お互いがいる場所が僕たちにとっては家だし。  

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