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第19話

 2ー7 解呪ですか?  「おはよう、ルーシェ。おはようございます、ワイエス男爵様」  奥の台所から腰にエプロン代わりの布を巻き付けた母様が出てきた。  両手に肉の積み上げられた皿を持っている。  「母様?」  僕は、信じられないものを見るように母様を見つめて立ち尽くしていた。  「体調は?」  「それが、ね」  母様がにっこりと微笑んだ。  「なんだかすごく体が軽くて気分もいいの」  マジですか?  僕は、わけがわからなかった。  昨日まで、というかアナハイムの家にいるときは死にそうだったっていうのに?  なんで急にこんなに元気になってるの?  「ああ、ルーシェ。お前の母上は呪いをかけられていたようでな」  ランクルが僕に話した。  「ここにきてすぐにうちの魔法使いが気がついてな。解呪したんだよ」  「本当に?」  僕には、まだ信じられなかった。  母様が助かったなんて!  母様は、僕が子供の頃からすでに何らかの病のために常に体調が悪かった。  それでも、いつも僕のことを気にかけてくれていた。  男でありながら女の子として育てられていた僕に剣術と魔法を教えてくれた。  いつだって僕を守ってくれた。  病を押して僕のことを守る盾になろうとしてくれていた。  僕が知っている母様は、いつも弱々しく微笑んでいて、だけど、芯は強くって。  僕は、子供の頃から母様を守れるようになりたいと思って生きてきたんだ。  それが、今、目の前に元気になった姿で立っていた。  頬は薔薇色だし、瞳にも力が満ちている。  僕は、感極まって涙ぐんでいた。  「母様、よかった」  僕は、母様に思わず抱きついて泣いていた。  「よかった!ほんとに」  「ルーシェ」  母様は、手に持っていた皿をテーブルに置くと僕のことを抱き締めた。  「今までずっと心配かけてごめんなさいね、ルーシェ」  「おいおい、涙の抱擁は、そのぐらいにしてくれよ。こっちは、腹が減ってしかたねぇんだ」  ランクルがどかっとテーブルの端の椅子に腰をおろした。  「あらあら」  母様は、涙を拭うと微笑んだ。  「朝食が冷めてしまうわね」  それから僕たちは、それぞれテーブルへとついて母様の作ってくれた朝食を食べた。  生まれて初めて食べる母様の手料理だ。  僕は、感無量だった。  「いただきます!」  僕は、目の前に積み上げられた肉の山から一枚だけ肉を取り分けると食べ始めた。

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