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第29話

 3ー5 異界の魔女の森  ルドの解体は、手際がよくて迷いがない。  肉がきれいに切り分けられていく。  僕は、ルドが切り分けた肉を受けとるとそれを抱えて台所へと持っていく。  今夜は、この肉でステーキだな!  僕は、ふぅっと吐息を漏らした。  「どうしたの?ルーシェ」  母様が僕が肉を台所に運ぶのを手伝いながらきいてきたので、僕は答えた。  「いや、もっと香辛料とか調味料があればなぁって思ってさ」  「こうしんりょう?」  母様が可愛らしく小首を傾げる。  「それに、ちょうみりょう?それは、何?」  「うん」  僕は、母様に説明した。  「砂糖とか、胡椒とか、そういうもののことだよ」  僕の言葉に母様が顔を曇らせた。  「どれも高価なものばかりね」  この世界では、砂糖や胡椒は高級品だ。  アナハイム辺境伯の屋敷でもそれはめったに手に入らなかった。  僕は、なんとか代替品が手に入らないものかと考えていた。  この屋敷の周辺には荒れた土地以外にはないので何か探すとなると当然異界の魔女の森に入るしかない。  「明日は、僕も森に行こうかな」  もともと僕は、1人で異界の魔女の森に入って薬草とか探していたし、何も問題はないはずだ。  ただ、ルドが、な。  「だめだ!」  ルドは、僕が異界の魔女の森へと行くことを却下した。  「ルーシェは、森に入ってはいけない!」  「なんでだよ、ルド」  僕は、訊ねた。  「今まで僕は、1人で森に入って薬草とかを採集してたんだよ?」  「そんなこともってのほかだ!」  ルドは、決して譲ろうとはしない。  だけど、僕だってみんなの役に立ちたいんだ!  僕だって、譲れない。  これからの季節は、採集にいいしな。  だが、ルドは、僕が異界の魔女の森に近づこうとすることをよく思わないようだった。  だから、僕は、ひそかに意を決していた。  明日は、僕1人で異界の魔女の森へ行こう!  まあ、1人でって言ってもソーも一緒だしな。  翌日の早朝、僕は、1人で異界の魔女の森へといく準備をするとそっと1人で家を出た。  森までは歩いて小一時間ぐらいはかかる。  僕は、まだ夜が開けきらないうちに1人で異界の魔女の森へと入っていった。  

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