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第40話

 4ー4 竜は、歌う。  その竜のいる階層は、どこまでいっても平和で魔物に襲われるようなこともなかった。  草原には、たくさんの竜がいたがどの竜も僕たちには、興味も示さずにのんびりと草をはんでいる。  時々、肉食の竜が現れることもあったが僕たちが見つからないように気をつけていれば大丈夫だった。  竜って、怖い生き物だと思ってたのに。  僕は、草原を進んでいきながら思っていた。  ここは、本当に静かでのどかな場所だった。  「なぜ、竜たちは、争わない?」  僕は、呟く。  「竜って言うのは、もっと気が洗い生き物だと思ってたんだけど」  「竜だって、争いたいなんて思ってはいない」  ルドが 僕にそっと囁く。  「みんな、静かに平和に暮らしたいと思っているのさ」  「竜ってやつは、宝の番人だっていうけど」  ランクルが竜を遠目に見ながらため息をついた。  「ここの竜たちは、違うのか?」  「確かに、ここにも宝はある」  ソーが僕の肩の上に乗ったままでランクルのことをじっと見つめる。  「だが、ここの宝は、お主らには関わりのないものじゃ」  「俺らには関わりのない宝って」  ランクルが不満げにソーに訊ねる。  「宝なのに、か?」  「そうじゃ」  ソーが僕の肩から飛び降りるとちょこちょこと歩き出した。  「人たる身には過ぎた宝じゃ」  「人には過ぎた宝?」  僕は、ソーに訊ねた。  「どういうこと?」  「お主は、敏いからすぐにわかるじゃろう」  ソーは、それきり黙ってしまった。  僕らは、歩き続けた。  草原は、広くどこまでも続いている。  その草原で竜たちは、ゆったりと草をはんでいる。  僕たちは、竜同士の戦いの場面にも出会った。  巨大な生物たちの凄まじい戦いに僕は、恐怖のために足が震えた。  でも、ルドが背後から僕を抱いて囁く。  「大丈夫だ。怯えるな。あの竜たちは敵ではない」  「ルド」  ルドの言葉通りに竜たちは、僕らには構うことがなかった。  竜たちは、腹がくちくなると遊び始めた。  楽しげに、竜の歌を歌う。  その鳴き声は、遠く遠くどこまでも響き渡っていく。  すると、彼方から別の竜たちが返事を送ってくる。  竜たちは、ここで幸せに暮らしているのだ。  その姿は、恐怖だけではなく、僕の心を震わせた。  美しい。  この世界は。  なんて美しいんだろう。

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