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第43話

 4ー7 勇者の物語  僕は、すっくと立ち上がると逃げるようにルドの隣からルルイエの方へといくとその横に腰をおろした。  「あれ、食べてくれたんだ」  「うん・・・」  ルルイエは、フードの奥から小さな声で頷いた。  「・・しかった」  「えっ?」  僕は、よく聞き取れなくって聞き返した。  ルルイエは、もう一度繰り返した。  「おいしかった」  「マジで?」  僕は、ちょっと照れてしまう。  「また、作るからよかったら食べて」  「うん」  ルルイエがかすかに微笑んだような気がして僕は、嬉しくってにっこりと微笑んだ。  僕らは、しばらく話をして過ごした。  ルルイエは、ずっとフードで顔を隠してはいたけど、つっかえつっかえ僕と話をしてくれた。  ルルイエは、もう二百歳にもなるらしい。  エルフが人の世界に出ることはめったにない。  ただ、ルルイエは、祖母が人間だったために人に興味があり、思いきって人間の世界に出てきたのだという。  そして、勇者だったルドと出会った。  それ以来、ルドたちと行動を共にしているのだとルルイエは、話した。  僕は、ルルイエから魔王との戦いについての話をきくことができた。  「戦いは、一昼夜続いて、僕たちは、疲れはてていた」  ルルイエは、話した。  「だけど、ルドが最後には、勝った」  僕は、ルルイエの話しに夢中で聞き入っていた。  だって、ルドは、そういう話はしてくれないからな。  ルドは、魔王を倒したときのことをきかれるのをあまり嬉しく思っていないから。  なぜか、そういう話になるとすぐに話をはぐらかされるんだ。  そういうところも、ルドは、変わっている。  僕は、ルルイエの目を通してみる勇者グールド・ワイエスの姿を思い浮かべていた。  それは、まさしく僕たちが昔話できく古の勇者たちの物語だった。  夜も更けていき僕は、そのままルルイエの隣で眠ることにした。  僕は、その夜、かっこいい、子供たちが憧れる勇者の物語の夢を見た。  もちろん、夢の中の勇者は、ルドだった。  僕の夢の中のルドは、それはそれはかっこよくって。  僕は、知らず知らずに口許が緩んでいた。  

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