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第54話
5ー6 ミミックの心臓
「マザー!」
僕は叫ぶと、ゆっくりと目覚めていった。
涙が溢れて流れ落ちる。
僕は、息を喘がせて目を見開いた。
「大丈夫か?ルーシェ」
ルルイエが僕のことを覗き込んでいる。
「すまなかったな、ルーシェ。魔道具の奴がお前を気に入ったらしくってやり過ぎた。お前は、気を失っていたんだ」
「えっ?」
僕は、徐々に思い出してきた。
ミミックの触手の毒を浴びて僕は、ルルイエに解毒剤を塗るように言われて。
そして。
僕の顔がかぁっと熱くなる。
僕、ルルイエの前であんな痴態をさらしてしまったなんて!
「あ、あの・・ルルイエ、ぼ、僕・・」
「気にするな、ルーシェ」
ルルイエが無表情のまま僕のことをじっと見つめる。
「これは、事故のようなものだ。忘れろ」
忘れろって!
僕は、動揺を隠せなかった。
忘れられるわけがないだろう!
はっと、僕は、息を飲んだ。
僕は、ゆっくりと体を起こすと呟いた。
「僕、行かなくちゃ」
「ルーシェ?」
僕は、ルルイエが僕にかけてくれていたフードを羽織ると立ち上がった。
僕を見ていたルルイエが声をあげる。
「待て!ルーシェ」
ルルイエがふらふらと歩き出した僕を追いかける。
「どこに行くつもりだ?ルーシェ」
「ここは、ミミックの腹の中だ」
僕は、呟く。
「だけど、ここが正解の場所なんだ」
「なんだって?」
ルルイエが僕を止めようとする。
「危ない!それ以上奥に行くな、ルーシェ!」
「ここの奥には何もないよ」
僕は、くすっと笑った。
「あなた方が恐れるようなものは、何も、ね」
僕は、洞窟のような場所を通り抜けると奥へと入っていく。
生臭い臭いがして、ルルイエが
顔をしかめる。
「ここは、ミミックの体内だ!喰われるぞ!ルーシェ!」
ルルイエがいうが僕は止まらなかった。
いや。
止まれないんだ。
この奥にあるものが僕を呼んでいるから。
僕は、奥へと歩き続ける。
ルルイエは、不審げな顔をしたまま僕のことを追ってきていた。
僕はかまわず奥へと歩き続けた。
だんだんと周囲は熱くなり、僕の首筋を汗が流れ落ちる。
「心臓へ近づいているんだ」
ルルイエが声を漏らした。
「ルーシェ!止まれ!危険すぎる!」
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