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第45話 頑ななんです。

 予備知識だけならたくさんあるからさ。  まぁ、それだってBLで得た知識がほとんどだから、色々お花畑物語なんだろうけど。リアルとは違ってるとこもあるとは思うけど……でも、知らないわけじゃない。  わけ、でして。 「はぁ……」  だから、男同士でどうするのかとか、わかってる。  準備が必要なのも。どこをどう、するのか……とかも。それはグリーンも同じで……そしたら、きっと僕がいわゆる「受け」になるのかなって思うわけで。  そっかぁ、僕、受けかぁ。  えー? 受け? 僕?  まぁチビ助だけどさぁ。  僕の中にある、僕的あるあるっていうか、法則? みたいなので、背が小さいほうが受け、っていうのがさ、あってさ。  そしたら、もちろん僕は確実に受けになるわけです。  その、お尻に……グリーンのが入っ。 「っ」  テクテクと駅から自宅への帰り道、一人、夕方の住宅地を歩きながら、お尻に見知らぬ緊張感が走って、きゅっとなった。お尻のとこ。ぎゅっと。  だって、お尻にだよ?  知ってますよ。  お尻にそれ、あれ、あやつを挿入するってことくらい。  BL愛読してますもん。  なので、そこ、濡、濡れないので挿入するのって結構大変だって、知ってます。  濡れないからローション使うっていうのもわかってます。そこはBLがファンタジーなとこって重々承知しております。  オメガなら濡れるけど。  僕、オメガじゃないし。  まぁ……グリーンはアルファって言われても「でしょうな」って感じだけどさ。イケメンで優しくて、外国人なのに日本語ペラペラでレポートだって日本語で書けちゃうし。運動神経だってよかった。そうだった、バスケめっちゃ上手だった。  あ、あと、かっこいいほうが攻めっていうことが多い。いや、これは好みの問題か。たまに、そっちが受け? っていう場合もある。前に読んだことのある二次創作のはそうだった。絶対的に一般的に見たらこっちが受け設定デショって言う、小さくて目がクリクリで女の子みたいなほうが攻めで驚いたことがあった。受けになってるほうが背も高くてイケメンで、すらっとはしてたけど腹筋しっかりシックスパックだったから。で、同じカプで他の人は大体、このシックスパックイケメンのほうを攻めにしてる。大体の人がそれを好むわけで。つまりは僕を含め、けっこうな人が僕のほうが受けって思うわけで。  けどさ。 「……」  けどさぁ。 「……はぁ」  グリーンのこと好きだけど。キスはしたし。キス。したいって思うけど。  じゃ、じゃっかん……若干ね、ビビるんだもん。  だって、そうでしょ?  嬉々としてBL大好きな女子だってさ。彼氏がいてさ、さ、今日は夜、エッチしますよーってなった時に、お尻のおほうでって言われたらどうよ?  どうなのよ。  いや、それはちょっと……ってなるでしょ。今の僕くらいには尻込みするでしょ。尻、だけに。  読むのと、実際にするのとって違うじゃん。  今の僕もそうなんです。  嬉々として読むけども。 「ただぁいまぁ」  家に辿り着き、自分の部屋のある二階に上がって、レポートも終わったおかげで軽くなったリュックを机の上に放った。 「……」  そんで、クローゼットを開けて、中にあるチェストに置いてある鏡に映る自分を見つめる。  もちろんBL漫画によく出てくる、女子みたいに目がクリクリ可愛いわけでもないし、そこはかとなく色気の漂う美人でもない。そこら辺にいる、そこら辺の大学生男子だ。 「する……」  のかなぁ。いつか。 「いやぁ……」  嫌なわけじゃないけどさ。嫌なわけじゃないんだけど。まだちょっと心の準備ができてなくて。 「……」  だから、あの花火大会でした気持ちいいキスの先はもう少し後でって、思っちゃうんだ。  まだ少しの間は今のままじゃ、ダメかなって。 「うそぉ……ン」  湯気いっぱい、ちょっと、七月、夏のお風呂場にしては熱い浴室に僕の思わず零れちゃった小さな声が響いた。  そもそもさ。 「……ここにぃ?」  そもそも、ここにそんなものは入らない。入りそうもない。  ちょっとだけトライしてみようかなって。  お風呂に入りながら、夜な夜な、ローションは持ってないからボディソープでそっと、そっとさ指をちょっとだけさ。  試しにね。  入るかなぁって。  ヌルヌル具合ならローションと変わりないから、ちゅるんと入ってみたりしないかなぁって。  思ったんだけど。  入りそうもない。  まず、そもそも入るところじゃないもん。  ここ。  出るところだもん。  隠れ腐女子男子を見つけられるクイズって前にSNSで見かけたことがあるけれど、声を大にして言いたい。  お尻の穴は入れるところじゃありません! 「クラクラしてきた……も、出よ」  頑なです。  僕のお尻。  お風呂を出ると、そこの鏡には真っ赤になった僕が写ってた。薄っぺらくて、さすが運動苦手インドア派らしい筋肉ゼロのもやし体系な僕がお風呂場で耳まで真っ赤になっていた。  お猿さんみたいに真っ赤な僕はヘンテコな顔をしていて、他の家族にお風呂の順番をせかされる前にとにかく顔を見られることのないように、慌てて着替えると濡れた髪のまま自室へと階段を駆け上った。

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