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第54話 これも朝チュン

 BL漫画にはよくある事後朝チュン設定って、幸せが溢れてる感じがして、僕は好きなんだ。  色々あったけど、俺たちようやく……って、受けの寝顔を眺めて微笑む攻め、とか。  俺、こいつとついに……って、感動したり。僕、ついにこの人と、って感激したりする受け、とか。  寝顔を見て、わ、かっこいいって見惚れたり、睫毛なげぇんだな……って、普段は気が付かないことに気が付いてドキリとしたり。あ、この睫毛なげぇなシーンは鉄板です。僕的鉄板。  僕的には受けの睫毛は長くてなんぼです。  そう、受けの睫毛は長くて……。 「な……んセンチ?」  ミリじゃないかも。センチかも。 「ほ……ぉ……」  グリーンの睫毛。  すご。  なが。  前に発見したけど本当に金色だし。根本からしっかり金色。下睫毛も金色。下の毛も……。 「っ、っ、っ」  なんか一人見悶えて、ぐっすり眠っているグリーンの隣で悶絶苦悶した。しちゃった後にもう一度シャワー浴びてご飯食べて、BL漫画でよくある裸で朝チュンとは全然違うけど。服着ちゃってるけど。  でも見た、から。  下の毛。  下の毛って。  下の毛って、さぁ。  思い出しちゃったじゃん。  昨日したって、まだわずかに残る、けど昨日ほどじゃない、何か大根挟まってます感とかさ。  昨日、グリーンと初、え……………っちを、してしまったんだなと。  照れくさくて、色々思い出せば思い出すほど、大丈夫だった? 僕、変じゃなかった? 何かしらやらかしたりしてなかった? どんくさいから気が付かないうちに失敗とかしてそうだし。鈍感だから……いや、グリーンには敏感って言われたけど。けどけど、っていうか、敏感って、敏感って! 「……」  なんか、よくわからなくなって、自然と顔が力んだ瞬間。 「!」  青い瞳とバチって音がしそうなくらいに目が合った。 「え……」  ほら、グリーンがすっごく驚いてる。そりゃそうだよ。目が覚めて、目を開けた瞬間、隣で変な顔した人が睨んでるんだもん。口を真一文字にして、ぎゅっと歯を食いしばりながらのしかめっ面が朝イチに自分を覗き込んでるんだ。  びっくり通り越して言葉も出ないでしょ。 「どう……青葉? ご、ごめん、どっか痛い?」 「! あ、いや、そうじゃなくて」  ぎゃあああああ、あ、あ。  がばっと起き上がったグリーンが僕の腰の辺りをやんわりとさすってくれた。 「けど、今、すごい顔して」 「! そ、それは」  そんな言われちゃう、すごい顔してた? まぁしてたよね。笑わず、引くこともなく心配してくれる辺りにグリーンの誠実さを感じる。 「なんか、思い出してしまいまして……その色々を……ですね」 「昨日のこと?」  頷いた。大きく頷くと頭突きしちゃいそうだから小さく。 「なんだ、すごい顔してたから、痛いのかと」  やっぱりそんなにすごい顔をしてましたか? 「っ」  ほぅ、と溜め息をついて、グリーンがまだきっとすごい顔をしているだろう僕を引き寄せて、頭に顎を載せる。横向きに寝転がってるから重たいとかじゃないけれど。 「痛いとかじゃなくてよかった」  グリーンの腕の中にすっぽりと納まりながら、話すと上下する喉仏を見つめてた。  声低いと大きい、とかあるのかな。僕が話す時もこんなに動いてる? 動いてない気がする? そういえばグリーンの声って優しい感じだからそんな気がしてなかったけど。 「……おはよ、青葉」  ほら、案外低い声。 「それと、ごめん、喉、ぐるしい」 「! ご、ごめっ!」  じっと見つめながら喉仏触ってた。 「苦しいよね、つい、だって生き物みたいに動くから。誰かの喉仏をこんなに注視したことないし、っていうか、あんまり見たことな、くて。こんなに……誰かとくっついたこと……ないから」 「うん」 「だから」 「うん」  笑顔が眩しいって言うの本当にあるんですね。  そんな笑顔を向けられています。今。 「夢じゃなかった」  わ……BL漫画みたいなセリフだ。 「青葉と……」  ほら、こういうの。  相手はまさに漫画から飛び出てきたような王子様。  その王子様が、僕がちゃんと存在していることを確かめるようにさっき労わるように腰を撫でてくれた手で引き寄せて、身体をぴったりと重ねて、そっとおでこにキスをした。 「……おはよう、青葉」 「お、はようございます」  僕の睫毛は一般的な長さしかないから、俯いても大して「わぁ長い」と驚いてはもらえないけど。寝ている顔も大して見惚れるほどの出来栄えじゃないだろうけど。  BL漫画の朝チュンシーンには程遠いけど。 「! あ!」 「? 何? どうかした?」  抱き締められて、幸せな腕の中から見上げたグリーンの鼻の穴。 「おぉ」 「え? 何?」 「お、お」  鼻毛も金色だと気が付いた。当たり前っちゃ当たり前だけど、でも、この角度とこの密着度じゃないと気が付かないこと。  色気はあんまりない朝チュンだけど。攻めの王子様が朝イチに見かけたのは、つい言っちゃうくらいに「すごい顔」をした受けで、愛でるよりも驚きが勝っただろうけど。  でも。 「え? 何、青葉」 「新発見」 「え? 何が?」 「内緒」 「は? なんで」  でも、僕が体験した人生初の朝チュンは今まで読んできたどのBL漫画よりも幸せが溢れてる朝だった。

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