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第57話 スピンオフの方がエロ割増論

 映画、すごく楽しかった。やっぱり観てよかったぁって。  二人でコンビニでお弁当買って、グリーンの部屋で映画の感想言い合いながら食べて、それで、少し漫画読んでみたりして、お互いに少しそわそわし始めて――。 「あ、あ、あっ……ン」  バックで、するのって、ドキドキする。  ぎゅっと身体を丸めて、自分の腕を胸のところにしまうように小さくなりながら、奥をクンってグリーンのでノックされると、キュって。 「青葉」 「あ、あ」  キュってするんだ。僕の中。 「気持ち、ぃ、青葉の中」 「ぅ、ん、僕もっ」  まだ、こういうことする時の自分の声は変な感じ。ドキドキして、ちょっと照れ臭くて。 「よかった……」 「あっ、やぁあっン」  少し強く奥のとこをされちゃうと、どうしても溢れちゃう甲高い声はとくに不慣れで、驚いて口元を隠したくなるくらい。 「あ、あ、あ」  それなのにグリーンが早く小刻みに僕の中を擦ると、もう、ダメなんだ。気持ち良くて、身体が勝手に跳ねて。 「ふぅ……ううっ、ン」  グリーンが僕を押し潰さないようにってついてた腕を曲げて覆い被さると、すぐそこ、耳元でグリーンの乱れた息の音がして。それだけでもゾクゾクって背中を何かが駆け抜けて。 「あっ、も……イッちゃうっ」 「青葉」 「あっ……ンっ……っ」  その瞬間、ぎゅっと抱き締めてくれるグリーンの腕にしがみ付きながら。 「あっ…………」  ゴム越しでもドクドクと脈打つのがわかる熱が。 「あっ……グリー……ん」  えっちなことの最後、いつも、抱き締めてくれるグリーンへ振り返ると、優しい唇がしっとりと重なった。  デートの終わりにはグリーンが僕を駅まで送ってくれる。僕はバスの定期があるからいいけど、グリーンはないじゃん? だから送るのなんてバス停まででいいよって言ってるんだけど。むしろ、僕、チビ助でも男なので、送らなくて大丈夫って言ってるんだけど。  ダメって。  危ないし、その、えっちの後は身体が心配だからって。  平気なのに。  女の子じゃあるまいし。  男なんだから、ヒョロヒョロで筋肉なくても、女子よりは力もある。だから多少のことじゃ壊れやしない。  バス代だって塵も積もればってやつだ。それならまた自転車借りればって言ったら、二人乗りは危ないし、禁止だし。そもそも、お尻の心配があるから自転車なんて言語道断なんだって。  言語道断なんて言葉知ってるなんてすごいよ。 「えぇ? あれのスピンオフ出るの?」 「みたいだよ」 「うわ、めっちゃ読みたい」 「そう? 青葉、苦手かと思った」 「え? なんで、って、とわわわわわ」  山の麓にある大学。大きな道には山を越えていくダンプカーが行ったり来たりでけっこう交通量が多くて。けど歩行者は少ないからか、ガードレールはなくて、男子二人が並んで歩いても踊っても全然余裕のある歩道と道路の境目は高さ十センチくらいのブロックが並べられてるだけ。そこを平均台みたいにして歩いてた。 「わわっ……と、ごめん、ありがと」 「青葉」 「はい。ごめん!」  お尻に大根……です。 「いや、この場合、俺が」 「違うってば」  えっちのあとは少しね、足元がふわふわしちゃうんだ。 「っていうか、ここまでで大丈夫だってば」  バスはそうたくさんくる訳じゃない。けど、山を越えていくからか、運航ルートが長めなのが影響してるのか、たまにすごく早くにバスが来ちゃったり。すごく遅くになっちゃったり。それが昼間ならバスの運行間隔が近いからいいんだけど、夜は……ね。一本逃したら次いつ? みたいになるから。だから、少し早くにバス停に行って、こうして待ってる。 「グリーンんとこに泊まっちゃえばいいと思うんだけど」 「……頻繁にはダメ。青葉の親が心配する」 「うちの親よりグリーンの方が過保護だ」  男なんだから、友達んとこ泊まって来るって言ったら「はーい、危ないことはしないようにー」で終わりだ。大丈夫なのに。  そう言ってもグリーンは笑って僕の頭を撫でておでこにキスをくれる。  そのキスに音声メッセージはついてないけど、触れる唇で伝わる。  大事にしたいんだよ、って、思ってくれてるって。だけどさ――。 「スピンオフ出たら買うから貸すよ」 「え!」 「青葉、基本は電子でしょ? 俺買うから、うちで読みなよ」 「うん! やった!」 「俺も、やった、だから」 「?」 「青葉をうちに招く理由がまたできた」  そんな理由なんて作らなくたっていいのに。  理由なんてなくても来るのに。 「あ、ほら、青葉、バスが来たよ」 「あ、うん」  そこへ山を越えてきたバスが、少し疲れてそうなノロノロ具合でやってきた。 「じゃあ、また……明日明後日ばバイトあるでしょ?」 「あ、うん」 「また連絡する」 「うん、僕も」 「ありがとう」 「うん」  ありがとうって。 「バイバイ」  理由なんてなくても来るし。  ありがとうなんて言われなくても連絡するし。むしろ、連絡グイグイしたいし。バイトはしないと、お金ないのであれですけれども。  でも、だから大丈夫なんだ。大事にしてもらえるのは嬉しいんだけどさ。  とってもくすぐったくなるくらいに嬉しいんだけどさ。  ―― そう? 青葉、苦手かと思った。  スピンオフの方が、大人カプのお話なんだ。だから少しエロくてさ。 「……苦手じゃない……もん」  僕も男子だから。好きな子のことを考えてるただの男子だから。だからさ――。 「はぁ」  運がいいのか悪いのか、僕しか乗っていないバスに揺られながら、盛大に溜め息を吐いて、バスに乗る時のグリーンの笑顔を思い出した。 「僕だってグリーンのこと、すごく」  好きなのにって、小さく呟いて。

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