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第67話 事後ってやっぱりくすぐったい

 えっちの後、シャワーを浴びるとふわふわとした心地がした。  プールで大はしゃぎして、そのあともたくさん動いて。今日は盛り沢山の一日だったなぁって、振り返ったりなんかして。  レジャープール楽しかった。アジアンフードフェスで食べたご飯も美味しかったし。日焼けは大丈夫そう。唯一、露出していた顔面と膝下は日焼け止め塗ってたから。  あんなに一日中水の中にいたのなんて、家族旅行で海に行った子どもの頃が最後かも。夏になると毎年海に行ってて、一日中波にはしゃぎまくってさ。そして夜、旅館で一泊する、その夜、まるで打ち寄せる波の中にいるみたいに足元がふわりふわりと浮き上がるような気がするんだけど、今回はそれよりもずっと強烈な余韻があって。  まだ少し、グリーンの存在感っていうか、さ。  たくさん、した。  すっごい恥ずかしい格好とかもしたし、なんか、自分ってこんなになっちゃうんだってくらいふわふわトロトロになっちゃったけど、でも。 「ねぇ、グリーン、エアコンの温度一度下げてもいい?」 「あ、ごめん暑い?」  でも、僕があんなことこんなこと、こーんな格好もしちゃったりしたの恥ずかしかったけど。 「ううん。暑いんじゃなくて」 「? わっ」  グリーンの色んな顔が見られたから、嬉しい、の方が大きい。 「ぎゅっと抱きついて眠ろうと思って。あ、電気代を少し払いますので」 「っぷ、いいよ、そんなの」  君の体温を感じたいんだって言ったら、クサイかな。 「飛びついたら危ないよ。ベッドから青葉も落ちる」 「へーき」  ぎゅっと抱きついて、グリーンの懐に全部預けながら、チラリと見上げた。 「僕、男だからちょっとやそっとじゃ壊れないよ」 「……」 「壊れなかったでしょ?」  むしろ元気でしょ? って笑って見せると、グリーンが目を細めて、そっと僕のほっぺたを両手で包みながら口付けをくれた。 「青葉って、最強だ」 「?」 「可愛いのに、カッコよくて、小さくて華奢なのに、きっと俺のこと一瞬でノックアウトできる」 「僕が?」  うん、そう頷いてグリーンが僕を抱えたまま、ころんとベッドに寝転がった。 「可愛くないよ」  グリーンが目を丸くして、それから難しい顔をしたと思ったら首を傾げてる。まるで「そう? そんなわけない」って言ってるみたいに。 「カッコよくなんて、マジでないっ。そんなの今までの人生で一回も言われたことない」  今度は笑って、そんなわけないのになぁって顔、かな。眉毛を少しあげて、それから僕の顔を覗き込んだ。 「小さくて、華奢……ものはいいようですな」  もやしっこ、ってことだけど。でもグリーンはそんな僕の筋肉感ゼロな腕にそっとキスをした。肩の辺り、それから、僕の腕を取って、内側の、ちょっとドキドキする辺りに「ちゅぅ」って口づけをして、キスマークをつけちゃった。 「……」  キスマーク、付いちゃった。 「わ」  そのマークをじっと見つめて、触っても指で押しても痛くないのに、ちゃんとそこにグリーンの唇が触れたっていう証がくっついて、なんか、ドキドキがすごくて。  ほら、BLには必須アイテムって感じじゃん?  キスマークってさ。 「こいつは俺のものなんだぜ」的な? マーキングみたいな?  そういうの僕、結構好物なんだけど。読んでると「来ました! キスマークエピソード!」って思っちゃうっていうか。 「これも、ずっとしてみたかったんだ」 「え?」  これも? なの? 「青葉を独り占めしてるっていう印」 「……」  わ。 「つけたくて仕方なかった」  わわ。 「俺、けっこう、独占欲強いみたいだ」  わー。 「青葉」 「っ」  耳にキスしながら名前を呼ばれちゃったりすると。もう、さ。 「いいよ、して」 「青葉?」 「独り占め、たくさんしてよ。し、印も、どーぞ、たくさん」  エアコンの温度、一度下げたはずだよね?  もう、さっきえっちであんなことこんなこと、あーんなこともしちゃった、よね? 「だって、僕、グリーンのだし」 「……」  なのに、まだ何だか暑いらしくて、ほっぺたなんか特に熱くて。グリーンの懐に潜り込みながら、今日何度もしがみついた腕にまた掴まった。 「どうぞ、全身、つけちゃってください」 「……」  もう一度下げた方がいいのかもしれない。それともまだ一度下げた効果が現れてないのかな。 「ほら、やっぱりノックアウトできる」 「?」 「やっぱり青葉は最強だよ」  熱くて、熱くて、仕方がないよ。  熱くて仕方がないけど、でも、ぎゅっと抱きついて。 「これでどうだ」  そう言いながら、グリーンの背中に回した手に力を込める。 「うん」 「どうだどうだ」 「うん」  部屋の中に穏やかで、優しくて、くすぐったい空気が溢れる。 「こうして」  もっと力を込めて。 「こうだ」  もっと頭をグリーンの胸に押し付けて。 「参りました」  そう囁くグリーンがまた僕にキスをした。  そして僕からもグリーンにキスをして、そのままそっと首筋に唇をくっつけた。 「……」  おお、案外、簡単に。 「青葉?」 「僕もつける」  キスマーク。 「グリーンは、その」 「うん」 「あ、の」  本来ならば烏滸がましいことではありますが。でも、お付き合いしてるし、さ。きっと誰もみたことのないグリーンを僕は知ってるからさ。だから――。 「俺は青葉の、だよ」  だから僕も君に印をつけた。君を独り占めしてますって、印をそこにくっつけて、そして、強く引き寄せてくれる腕に全部を預けるように目を瞑った。  たくさんあった今日に疲れながら、でも心地良さに目を閉じて、ひんやりとする空気の中で好きなだけ僕だけの居場所に甘えていた。

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