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第5話(R18)

「それでね、春輝そこを誤魔化して吹いてて……」 四人で夕食を食べるという約束をした春輝だが、実際来てみて後悔した。 今日は隣に冬哉が座って、事ある毎に春輝にくっついてくるのだ。 (水野の気を引くなら、もっと他のやり方があるだろーに) 助けを求めようと宮下を見るけれど、嬉しそうに春輝たちをニコニコ見つめているだけだ。 (だめだ、宮下先輩は微笑ましく見てるだけ……じゃあ、水野……) 春輝は貴之に視線を送る。周りの生徒もこの状況に気付いているらしく、チラチラと視線が注がれて痛い。 「しかもね、春輝ってフルート吹いてる時はすっごい色っぽいんですっ」 「ちょ、冬哉……っ」 冬哉が春輝の右腕に抱きついた。これではご飯が食べられない、と思ったその時、横から声が掛かって冬哉の腕が外れる。 「へぇ、じゃあ俺も日曜日のお祭り、聞きに行こうかな」 「間宮……」 「んん? だあれ?」 冬哉がいつものように無邪気に聞いてくる。春輝はクラスメイト、と答えた。 「ああ、いいよ是非。夢の国の曲メドレーやるから」 そう言うと、間宮はいいね、楽しみにしてる、と言って去っていく。 「ほら冬哉、声が大きい。大体、オレは色っぽい要素一つも無いし、お前がそう言うと誤解する奴らがいるから止めてくれよ」 春輝は冬哉の方を向いて言うと、彼は困ったように笑ってごめん、と謝ってきた。同時に宮下も苦笑したので、何ですか? と春輝は聞く。 「いや、兄弟みたいだなって。おい、お前も会話に入れよ」 宮下は話題を変えるように貴之の肩を抱いた。ガッチリした腕を回され、心底迷惑そうにする貴之。その表情があまりにも正直なので、春輝は笑ってしまう。 「あ、春輝……お前可愛いな」 「でしょ? 吾郎先輩」 どうやら春輝の笑顔に、宮下の可愛いセンサーが働いたようだ。いやどんなセンサーしてんだよ、と春輝は内心突っ込む。 「木村」 そこでようやく、貴之が口を開いた。彼はもう食事を終えており、春輝たちが食べ終わるのを待っている。 「一之瀬の食事が進んでいない。そろそろ食べさせてやってくれ」 そう言われ、いつの間にかまた冬哉が腕にすがりついている事に気付いた。冬哉は素直に返事をして、春輝を解放する。 「一之瀬も。嫌な事は嫌だと言え」 「う……」 春輝は言葉に詰まる。その様子だと、視線だけでやめて欲しいと訴えていた事が、バレていそうだった。 「春輝っ、嫌だった? ごめんねっ」 「ああいや、ご飯が食べられないなーって思っただけで、別に嫌だとかは……」 あと、変な噂を立てられるとかも考えたけど、とは言わずにおいておく。すると、貴之はまた盛大にため息をついた。冬哉は貴之が好きなのだ、彼がこうやって貴之の気を引きたいと思っているなら、多少は我慢しよう、と春輝は思う。なのに何故ため息だ? とイラッとする。 「何だよ、言いたい事あれば、ため息なんかつかずに言えよ」 「……言って良いのか?」 貴之は何故か冬哉を見てそう言った。何故冬哉に聞く、と不思議がる暇もなく、冬哉が割って入る。 「はいはいっ、そこまでだよっ」 ケンカは良くない、とニコニコして、冬哉は春輝にご飯を食べるよう促した。何なんだ、と春輝は腑に落ちないながらも、残りのご飯をたいらげた。  ◇◇ 食事が終わり部屋に戻ってくると、またいつものように春輝はベッドの上で漫画を読み始める。 「一之瀬」 「なに」 「俺も日曜日、演奏聞きに行く」 「はあ……どうぞご自由にー」 そう言いながら、何故そんな宣言をするんだ、と思った。別に貴之が来ようが、春輝には関係ない。 (あ、もしかして……) 春輝はニヤリと笑う。 「もしかして、冬哉の演奏する所、見たくなったのか?」 それなら大歓迎だ。冬哉も喜び、張り切って演奏するだろう。しかし彼は至って普通の顔で、そういう事にしておこう、と浴室に行った。 (そういう事にしておこうって……素直じゃないヤツめ) 一人ニヤニヤしていると、はたと今日は金曜日だということに気付く。貴之は毎週火曜日と金曜日に早めに風呂に入り、溜めた洗濯物を洗いに行くのだ。 春輝は迷った。ある事を決行するかどうか。 日曜日のお祭りが終われば、今度はコンクールに向けてまた慌ただしくなるだろう。そうなれば、一人で落ち着ける時間は限られてくる。ましてやプライベートスペースなど無いこの部屋だ、チャンスは逃したくない。 春輝は決行することにした。貴之が浴室から出てくるのを待つ。 そして一時間後、貴之が洗濯をしに出ていったのを確認し、春輝は浴室に入った。 いつも通り頭と身体を洗って、ひと息つく。大丈夫だ、脱衣所はカーテンだけだけど、浴室のドアは鍵を掛けたし、貴之はしばらく戻って来ない。 (……よし) 春輝は股間に手を伸ばす。 (みんなは、いつどのタイミングでしてるんだろーな?) まさか、寮にいる限りオナニーしないなんて聖人君子、いるわけないよな、とか思いながら、右手でゆるゆると擦り上げると、そこは久々の刺激にあっという間に硬くなった。自分の石鹸を手につけ、滑りを良くすると、思わず足が動いてしまう程気持ちが良い。 目を閉じ、感覚を集中させる。竿の裏の先端の方と、亀頭を中心に刺激を与えると、はぁ、と甘い吐息が出た。そのまま声を上げてしまいそうになり、春輝は唇を噛む。 「ん……っ」 そうしたら一気に感度が上がっていき、ゾクゾクが止まらず上を向いた。 「……っ、あぁ……っ」 小さく声を上げると、春輝の先端から白濁した体液が飛び出す。断続的に出てくるそれは溜まっていたのかなかなかおさまらず、苦しい程の快感に一人悶えた。 「はぁ……」 落ち着いて一息つくと、シャワーで汚れた所を洗い流した。これでしばらくは、ムラムラせずに過ごせる……と良いのだが。 春輝はもう一度頭からお湯を掛け、浴室を出た。

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