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第5話

 心臓が跳ねた。佑也はおっかなびっくり視線を下へとずらしていき、そのさまを目の当たりにしたせつな凍りついた。  下肢で繰り広げられる光景は信じがたいものだ。万人にかしずかれても、威厳に満ちて平然と受け止める男が、狭間に顔を埋めて慎ましやかに在る秘密の蕾にくちづける。あまつさえ、いかがわしいギャザーを舌でめくる。  太陽が西から昇るほど、ありうべからざることだ。 「や、め……っ!」  にゅるり、と舌が菊座にねじ込まれた。罠にかかって〝籠の鳥〟になり果ててからこのかた、朝な夕なに秘花を悪戯されて、そこに快感の芽がひそんでいることを教え込まれた。  心は断固として不埒な行為を拒む。しかし、そこに唾液をまぶすように舌が蠢き、ギャザーを舐めほぐしていくにつれて、すべての細胞がさざめきはじめて官能のさざ波が立つようだ。 「こんなの、おれじゃない……っ!」  頭を打ち振り、可能なかぎりずり上がった。ところが(へそ)を折り目にたたまれた体勢で抗うと、いやでも橘と視線がかち合う。  脚の付け根で、これ見よがしに舌をつかう支配者と。  陰門を唇の上下で食まれて、そこをちろちろと舐め散らかされるとペニスが萌す。冗談じゃない、と佑也は足をばたつかせた。舌では柔らかすぎて物足りない。もっと硬いもの、太いもので内壁をこすりあげてほしい──と、せがむように蕾がほころんでいく気配がするなんて、悪夢以外の何ものでもない。  橘は以前、荒馬を乗りこなす面白みと佑也を育てる楽しみは相通じるものがあると、うそぶいたことがある。彼は馬術で培ったノウハウを応用して清らかな後ろを拓き、まっさらな躰を自分好みに作り替えた。 「……っ!」  舌が門に分け入った。入口の際をさまよい、ひとしきり遊んで甘い疼きをかき立てては、遠のく。  佑也は物狂おしく髪を振り乱した。けれど舌が挿し込まれるたびに、ぴちゃぴちゃと淫靡な水音が秘処にくぐもり、だんだん高まっていけば、手つかずで放っておかれている胸の粒さえ独りでにしこっていく。  ペニスが頭をもたげる。欲望がくすぶって身内を焦がし、しかし両手は緊縛されている。  逆鱗に触れた報いは、快楽による支配だ。  そうと察して唇をぎりりと嚙みしめた。卑劣なやり口に屈するくらいなら、それならいっそ、ひと思いに刺し貫かれたほうがあきらめがつく。  襞を舐めつつかれると、意に反して腰が揺らめく。ペニスをシーツにすりつけて慰めたい、という誘惑に駆られる。  佑也はのたうち、だが、もがけばもがくほど、その裸身は桜色に染まって凄艶さを増す。男を獣に変える色香がくゆりたつことにちっとも気づかず、身をくねらせる。

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