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第7話

「契ってください……復唱しなさい」 「レイプ魔のくせしてカッコつけて嗤える」  指が秘密のボタンをつついては遠のく。それは、あくどい淫技だ。内壁を嬲りのめして花びらをめくりあげておきながら、なまくら刀でいたぶるように突然、一切の動きをやめてはぐらかすのだから。  もどかしさに腰が跳ねると、手錠が手首に食い込む。鮮血がにじんで肌に網目模様を描き、一顧だにされないペニスが切なげに揺らめく。  それを橘が無造作に摑んだ。花茎全体に蜜を塗り広げるように指を蠢かしながら、昏い笑みを口辺に漂わせた。 「これが、だらだらと涎を垂れ流しているようでは『嫌だ』と言っても説得力に欠ける」 「ゲスっ!」    せせら笑いを浴びせて返し、しゃにむに躰をねじった。だが抵抗すればするほど、逆にペニスに絡んだ指がすべって鈴口をかすめることになる。  とりもなおさず思う壷にはまるのだ。  足枷と鎖の二段構えで自由を奪われている左足が、こむら返りを起こす前兆に痙攣しはじめる。それから、きっとそれの結び目は、もともとゆるめに加減してあった。死に物狂いになって暴れるうちに、右足を縛めるネクタイがほどけた。すかさず涼しい顔めがけて蹴りを放つ。  橘は起死回生の一撃を難なくかわした。そして目を細める。 「見込んだとおり、骨のある子だ」  官能的な声が、とびきり甘くかすれる。 「誇り高い。実にしつけ甲斐がある」    と、含み笑いを交えて言葉を継ぐと一旦床に降り立った。ことさら悠然とテーブルに歩み寄り、煙草を咥えた。  敢えて、この場面で紫煙をくゆらすさまは、佑也を不安に陥れて愉しんでいるようにも、花を散らしたいと逸る自分をなだめているようにも見えた。  佑也は鎖をがちゃつかせながら可能なかぎりずり上がった。平凡な大学生にすぎない自分が、なぜ魔手にかかる? 自分と橘を引き合わせた運命が呪わしい。 〝檻〟から出られ次第……必ずあの男を殺す。八つ裂きにしても飽き足らない。爪を一枚ずつ剝いでいって、骨を一本ずつへし折っていって、死んだほうがマシという目に遭わせてやる。  ふつふつと殺意をたぎらせ、それでいて腰がもぞつく。(ほと)びるほどに舐めとろかされた花芯が、そこを満たしてくれるものを欲して甘やかに疼く。  橘が煙草を揉み消した。ゆったりとベッドに舞い戻ってくると、佑也を跨いで膝立ちになって、ざんばらに乱れた髪を摑む。 「……っ!」  引きずり起こされて肩の腱がねじれた。橘は、顔をしかめる佑也に微笑みかけると、ボトムをくつろげて下着をずらし、自身を摑み出した。  そして、これからこれで純潔を踏みにじるのだと知らしめるように、これ見よがしに雄蕊(ゆうずい)をしごく。

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