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第10話

 レイプされているにもかかわらず感じる。AVの類いではおなじみの代物など、所詮、凌辱者に都合のよい神話にすぎない。  だが変だ。前哨戦のようなゆるやかな抜き差しに、もどかしささえ感じる。殊に耳の穴に舌を這わされると、連動して(なか)も濡れた音を響かせる。ふたりの腹に挟まれてひしゃげたペニスが、次第に張りつめていく。 「変態……いっぺん、死ね……ぁ、ああ!」 「きみのここはとても素直だ。退()けば……」  筒全体がきゅうっと締まって留まっていてほしい、と雄身にせがむ。 「挿入れば……」  襞が波打って、幹にじゃれつく。 「それから、ここだ」  尖塔で突起を突きしごかれた。そのせつな、蜜が泡立って和毛(にこげ)をぬらつかせ、その淫靡な雫はとろとろと谷間を伝い落ちて花芯を潤す。 「冗舌な花だ。こうすれば高らかにさえずる」  とは、だ。絶妙の力加減ですりあげられるたび、むずかるように内壁がうねって、奥へ奥へと陽根をいざなう。 「わたしを巧みにあやして、物覚えのいい子だ」 「誰が……っ! ……ぁ、あ」 「玲瓏とした響きだ。もっと、いなないてごらん」  睨み返す。視線で橘を射殺せるものなら、ぜひともそうしたい。赦さない、絶対赦さない。心の中で繰り返しそう唱えながら拳を固めた。自分は堪えがたい恥辱を受けている。ならば、橘にもそれ相応の代価を払う義務がある。  佑也が罪の償いに、と橘に望むものは彼自身の命。しかし浅ましいことに、媚肉は砲身にしなしなとまといつく。なかば意識的に後ろをすぼめて、リズミカルな抽送に応えていることも確かだ。  たったいま手錠を外してもらえれば、暴君にありったけの情熱を込めて抱きついてしまうかもしれない。シーツを皺くちゃにしながら行き惑う左足にしてもそうだ。  のったりとグラインドする腰に絡めたうえで、ねだりがましげに下肢をくねらせて、自ら交わりを深めてしまうかもしれない。 「ん、ん……ぅ、ん……ん、っ!」  橘が、そこを愉楽の壷に作り替えたのだ。  ペニスをしごくことで得られる直截的な快感とは、まるで違う。殺意がみなぎる心と裏腹、つまんでほしげに乳首が尖る。後から後から蜜がにじんで、はしたない調べを奏でる。  頭のてっぺんから爪先まで、あまねく橘で満たされるように。  ぬぷり、と突きあげられた。その瞬間、快感のパルスが全身を駆け巡って危うく達しかけた。四肢を突っ張って、からくも持ちこたえる。(はらわた)が煮えくり返り、にもかかわらず、だんだん呼吸が合ってくる。攻め入ってこられれば花筒全体が橘の形に狭まって彼を歓迎するありさまなのが、くやしい。  愛欲の虜と化したように。

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