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14 束の間

 疲労困憊。全身の怠さに加え、腰の痛さとその他諸々の痛さで動けなくなってしまった僕はベッドの中で目を瞑る。  久しぶりの周さんに、普段以上に大胆になってしまってビックリするくらいにお互い求め合ってしまった。欲の赴くまま……周さんは僕が大胆になればなるだけ嬉しいと笑うけど、恥ずかしすぎてしょうがない。実際セックスをしすぎて動けなくなって、大事な恋人に後片付けを全てやってもらっているなんて、情けないやら恥ずかしいやら。でも久しぶりだったんだからしょうがないじゃん? 周さんだって喜んでくれたし……と、ぼーっとする頭でぐるぐると考える。 「竜太、大丈夫か? ちょっとやりすぎたな。ごめんな」  コップに水を入れ、周さんは僕に飲ませてくれた。やりすぎなのはお互い様だし、こうやって一緒にゴロゴロしてくっつき合って、たくさんキスして眠れるなんて幸せすぎて文句などつけようがない。 「ふふ……」 「なに?」 「周さん、本当に帰ってきたんですね。嬉しいな……あ、電話鳴ってる」 「あー、だな」 「出ないんですか? あれ周さんのスマホですよね?」 「ん、いい。大丈夫」  リビングから微かに聞こえてきたスマートフォンの呼び出し音。しばらく鳴り続いていたけど諦めたのか静かになった。僕は周さんに腕枕をされながらちょっとは気になったものの、眠気半分、夢心地になっていたからさほど気にすることなくすぐに眠ってしまった。  眠りについてからどれくらい経ったのだろう。軽く体を揺さぶられ、頬にキスをされ目が覚める。 「悪い、もう少ししたら俺、出るからさ。竜太は今日は休みだろ?」 「ん……僕は休みです。そっか、行っちゃうの?……残念」  しばらく忙しいからこっちには来れない、と言う周さんの言葉を半分寝たまま聞いていたから、次に目が覚めた時に周さんが出ていったあとだとわかってがっかりした。  僕は周さんと一緒に住んでいない──  高校生の頃に周さんが一人暮らしになるとわかった時は二人で生活するのを夢みたりもしたけど、その後大学に進学した僕とバンド活動を続けている周さんとでは生活リズムが違いすぎるということもあって、結局別々に暮らしていた。不思議なことに今となってはそれほど一緒に住みたいとは思わなくなっている。でもそうは言っても周さんは時間さえ合えばほとんど僕の部屋にいるから、同棲しているようなものなんだけどね。   「あれ……圭さん?」  ノロノロと起き出し、着替えをしながら自分のスマートフォンを手に取って気がついた。昨夜から圭さんからのメッセージと着信の履歴が数件、連続して残っている。学校にいる時からマナーモードのままにしていて、着信があったことに全く気がつかなかった。悪いことをしたな、と思いながら折り返そうか迷っていたら、すぐに圭さんから電話がかかってきて慌ててしまった。 『ああ、竜太君? 朝っぱらから悪いね。周そっちに行ってるだろ?』 「はい、でももう出て行った後で……僕寝てたんで周さん何時頃出て行ったかはちょっとわからないんですけど……」 『そっか、ならいいや。こっち向かってんのかな。ありがとう』 「あ、僕、電話に気が付かなくてごめんなさい」  どうやら周さんは圭さんたちに黙って勝手に帰ってきてしまったらしい。翌日すぐに打ち合わせもあったから、帰国後はホテル泊の予定だったのに、周さんだけ用事があるからとか言いながらバックれたのだと聞かされた。周さんらしいし、そうまでして僕に会いにきてくれたのは嬉しいけど、きっと圭さんにこっぴどく怒られるんだろうな。

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