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19 肉体改造計画(仮)

 僕は断じて毎日こんな食生活をしているわけじゃない。これは康介がお詫びにと言って買ってきた朝食だから、変に遠慮して残してしまっても悪いと思ったから食べていただけ── 「学生の頃から変わってないから!」 「いやいやいや、ちょっと太ったよ。自覚ないの? 普通朝っぱらからこんな甘いの食べねえって。どんだけ食うんだよ、びっくりしたわ」 「これは! 康介が買ってきたからでしょ」 「そうだけど……まあ買ってきた俺が言うのもなんだけどさ。これ竜好きだろうなって思ってさ」 「うん、好き」  シャワーを終え出てきた康介が僕を見て呆れ顔。康介曰く僕は太ったらしいけど、元々ヒョロッと痩せて情けない体だったから今くらいがちょうどいいんだ。それに周さんにだって指摘されてないんだから康介にとやかく言われる筋合いはない。でも目の前にいる下着姿で半裸状態の康介の体はビックリするほど鍛え上げられている。僕が知っている高校生の頃の康介とはひと回りくらいサイズ感がアップしているように見え、自分が物凄くだらしないんじゃないかとも思えてくるほど。いや、鍛えているのは知ってたけどさ、こんなまじまじと見たことなかったから気が付かなかったよ。確かに男の僕から見ても、割れた腹筋や隆起した整っている筋肉は惚れ惚れするけど……でもほんと「康介は何目指してんのか分からない」って言ってた修斗さんの気持ちが少しわかった気がする。 「うるさいな……なんかムカつく」 「だってよ、せっかく垢抜けてイケメン感アップしたのに、ぷよぷよしちゃったら勿体無いし。今度の同窓会、竜も参加すんだろ?」 「同窓会? うん、行くつもりだけど。みんな来るって聞いたし……てか僕の体と同窓会は関係ないじゃん」 「いや、あるでしょ! 久々にみんなと会うんだぞ? 会わない間にいい体になったって思われたいじゃん」 「……? なんで?」  康介は、鍛えるのは自分に自信をつけるためなのだと言い、修斗さんが「かっこいい」と褒めてくれたから頑張って体を作っているのだと教えてくれた。きっと康介は元来体を動かすのが好きだから夢中になっているんだろうな。やりすぎかな、とも思うけど。 「だからさ! 竜も俺と一緒にジム通いするぞ」 「え? やだよ」  やる気満々な康介にちょっと引く。そもそも仕事の後は疲れてるのに、わざわざ体を動かしに行くなんて僕には無理。でも康介が熱心に筋トレの良さを勧めてくるし、僕みたいに運動が苦手でもトレーニングはできるし、なんなら康介が手取り足取り教えてやる、なんて言うもんだから、絶対ジムなんて行かないぞ! と思っていたのに段々とその気になってしまった。しまいには「周さんだって竜のこと男らしくなったって言うんじゃね?」なんて言われてしまい、悪くないな、と思ってしまった。僕って案外チョロいのかもしれない。 「じゃあ、体験だけでも行ってみようかな?」  特別ムキムキになりたいわけじゃないけど、康介の言う通り少しは筋肉をつけたほうが健康的なのかな、と思って、近々康介の通うジムに行ってみることにした。

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