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20 いつもの放課後
週に一度の学年会議。来月の初めに行われる作品展の進捗状況の確認もあり、今日の会議は普段と比べてだいぶ長引き時間がかかってしまった。
「こんな時間まで会議ってちょっと酷くないですか? 私、今月学年便り担当なのに……主任に明日までって言われた。信じらんない。もう帰りたい」
帰り支度をしている先生方を尻目に、コーヒーを淹れていた梅北先生が僕に向かって小さく愚痴る。
「え? 梅北先生、まだ作ってなかったの? 学級便りもいつもギリギリまでバタバタしてるし、何やってたんですか?」
「いや、やってますよ? まだ終わってないってだけで……」
正直言って梅北先生は時間にルーズなところがある。当番制で作成者を決め月一で発行する学年便りとは別に、週一回発行する学級便りがある。こちらは毎週クラス担任が受け持ちのクラスのために作るもので、それぞれ自由に創意工夫がされていて先生方の個性がでていて面白い。イラストやユーモアも交え凝った便りを作る先生もいれば、必要最小限だけ記載されたすっきりとした便りを作る先生もいる。そう、とりあえず最低限来週の予定と今週の振り返りがわかれば十分なはずなのに、梅北先生は毎週のように自身の学級便りすら「まだ終わらない!」と焦っていて、手伝わされることが多々あった。
「ほんと私こういうの苦手なんですよ。ほら、見て! ここ、生徒の感想を何人か載せないとなのに、なかなか選べなくって……渡瀬先生、お願い! 手伝ってください!」
今月は学年行事でプラネタリウムの見学があり、その報告がメインの便りになる。簡単な活動報告に子どもたち数人の感想も添えて記事を作るのだが、その肝心な感想を誰にするのかが決められないのだと言い僕に泣きついてきた。学級便りも然り、梅北先生ははじめから僕に頼る気満々なのが見てとれる。
「この感想文、先週にはもうみんな提出してますよね? なんで今の今までやってないんです? たまには一人でやり遂げてくださいよ」
「えー、そんなこと言わないで、お願いします。ここから四人分くらいをピックアップしておいてください。はいっ、これです!」
いつものように捲し立てられ、気がついたら感想文の書かれたプリントをごっそりと手渡されてしまっていた。
「あっ、渡瀬先生はコーヒーはミルクとお砂糖ですよね?」
僕にプリントを押し付けた彼女は楽しげにコーヒーを淹れに行った。ほんといつものことだけど調子がいい。まあ、僕がしっかり指導してないからと学年主任に二人揃ってどやされるのも目に見えてるから、手伝わないわけにはいかないのだけれど──
「これで明日主任に最終チェックしてもらえれば大丈夫ですね」
「やったぁー、終わったぁ! ありがとうございます! 渡瀬先生!」
結局、梅北先生が編集している横で僕が都度確認しながら進めていった。そもそもこれまで発行してきた便りのテンプレートだってあるわけだから、それを利用し作ればいいだけのこと。梅北先生は自信がないのか、いちいち僕に「これでいいですか?」と確認をしてくる。まるで一年目の頃の僕のよう。何をやるにも「これでOK」と確認をしてもらわないと不安なんだ。明るく調子のいいことを言っている彼女でも、内心は自信がなくて不安なのは僕も同じだっただけによくわかるから、なんだかんだ言っても放っておけずに手伝ってしまうんだよな。
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