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23 友達、先輩、みんな友達!
「修斗君なんて、ほら! 見てここ……コメントしてくれてる。羨ましすぎる」
「……だね」
梅北先生は実は修斗さんの大ファンで、フォロワー一覧から見つけた時は声出して転げてしまったのだと興奮しきりに僕に話す。
「二度見しましたよ。二度見からのまた二度見! 声出たもんびっくりして。ほんと先生何者なんです?」
どうやらフォローもフォロワーも少ない僕が、有名な人たちと相互になっていてやり取りをしているのが信じられないらしい。
「てか、話ってまさかこのことじゃ……」
「そうですよ! だって気になるじゃないですか!」
「嘘でしょ? どうでもいいでしょ、こんなこと」
「どうでもよくなーい! 教えてください! なんで修斗君と繋がってるの? 美味しそう、今度食べさせて……って修斗君がコメントしてるのなんで?! 仲良しか?! どういう関係??」
修斗さんはちょくちょく僕の投稿にコメントをくれるんだっけ。梅北先生、ファンだと言ってただけにかなり気になるのか、もうすっかり僕に対して敬語も抜けてしまっている。そしてすごい剣幕で捲し立ててくるから圧倒されてしまった。
「えっと、修斗さんたちは僕の先輩で。高校の時から今でも仲良くさせてもらってるんだ」
「友達! 先輩? みんなっ? 友達!?」
はわわと口に手を当て息を吐き出すようにして「友達!」と囁く梅北先生の興奮状態が少し面白くなってしまった。まるで片言で日本語を喋っているみたいだ。目をキラキラさせてはしゃいでいる彼女は、いつもより小声なのにかなり騒々しく感じる。
「梅北先生、興奮しすぎですって。落ち着いてください」
「は? 無理っ! 落ち着けるわけがない! やっぱり知り合いだったんだ。渡瀬先生すごい……信じられない。お友達だなんて……」
梅北先生は頬を赤らめ僕のことをじっと見る。世間から見たらテレビに出ていたり音楽の活動をしてファンの人がたくさんいる遠い存在の人たちかもしれないけど、僕から見たらみんな普通の同年代の大事な友人たちにすぎない。すごい人たちには変わりないけど、知り合ってからずっと僕らは同じ目線で接している大切な「友人」なんだ。
「梅北先生、僕は何もすごくないですよ? ここで繋がっている人たちもみんな僕にとって大切な友人ってだけです」
「え、まあそうでしょうけど……」
「梅北先生にもお友達いるでしょ? 大切に思ってる友達。僕も一緒です」
話しながら高校生の頃を思い出す。クラス替えをして初めて顔を合わせるクラスメイト達に囲まれて、志音のことや周さんたちのことを矢継ぎ早に聞かれたこと。名前すらまだ知らないクラスメイトに、顔を合わせた途端に馴れ馴れしくされ、それは僕ではなくその先の周さんたちや志音に近づきたい、という表れなのだとわかった時の置いてけぼり感。その時の微妙な気持ちにちょっと似ていた。
こんな調子で修斗さんたちを紹介してくれ、なんて言われたら嫌だな、と頭をよぎる。余計なことを言いふらされないか不安になる。そんな僕の心情が伝わってしまったのか、梅北先生は「ごめんなさい」と落ち着きを取り戻し、僕に向いた。
「びっくりしちゃって思わず聞きましたけど、それでどうこうってことじゃないですからね。あくまでもファンとして、近くで繋がっていたってことがわかって嬉しい! ってことを言いたかったんです」
修斗さんはもちろんだけど、周さんたちkany-dropsも大好きで、梅北先生も学生の頃によくライブハウスに通っていてCDも持っているんだと教えてくれた。曲ももちろんだけど、ちょっとクールな印象の周さんが一番好きかな、なんて言われて僕も嬉しくなってしまった。
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