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41 親睦会

 親睦会当日── 「カンパーイ!」 「康介君、竜太君、よろしくね!」  あまり気が乗らなさそうな康介を誘い、僕らは一樹さんが予約してくれていたダイニングバーにいる。一樹さんと一緒に来た人はどうやら一樹さんの幼馴染らしく、同じような明るいノリで楽しそうな人に見えた。 「俺は実邦(みくに)ね。二人のことは一樹から聞いてるし、まあ今日は楽しもう」  実邦さんは僕の隣に座り僕と康介に酒を勧め、一樹さん以上に陽気にお喋りを続ける。簡単な自己紹介から始まり、ユーモアも交えて僕らのことも聞いてくるから、質問攻めでも不思議と煩わしさを感じることなく話に夢中になってしまった。仕事はサービス業だと言っているだけあって、実邦さんの話がとても面白く、一樹さんとの掛け合いも息がぴったりで楽しかった。 「竜太君、次何にする? お酒あんまりだったっけ? ならこれは? 飲みやすくていいよ。ちょっと飲んでみ?」  長いことチビチビと呑んでいた最初の乾杯のグラスを空け、ソフトドリンクに切り替えようと思っていたのを見透かされたのか、実邦さんは自分が飲んでいたカクテルのグラスを僕に向ける。そのまま口元まで持ってこられてしまったら飲まないわけにもいかず、しょうがないから一口だけ啜った。 「あ……ほんとだ、これはジュースみたいですね。て、アルコール?」 「うん、お酒だよ。飲みすぎないようにね。俺も頼むから一緒に……」  楽しい雰囲気にのまれ、僕は実邦さんに言われるがまま追加の酒を注文する。お酒は苦手だと言ってもビールを一杯……少し残ってるけど、それしか飲んでいないからまだ余裕だ。僕の斜め前に座る康介は、ちょっと嫌な顔をしてこちらを見てるけど、どうせ「飲み過ぎるな」と言いたいだけだろう。ペースの早い一樹さんにつられて康介だってもう顔が赤くなるくらい飲んでるんだ。僕だってまだ大丈夫。康介の視線を気にしつつ、追加で来たカクテルを持ち「乾杯」と実邦さんとグラスを合わせた。 「康介君はバッチリいい体になってるけど、竜太君はまだ細いね。一樹のとこのジムに通ってるんでしょ?」 「あ、はい。でも僕は体作りというか健康維持……まあ気分転換に行ってるって感じだから」  酔いが回っているのか、実邦さんは僕の二の腕をふにふにと弄りながら、まあまあ失礼なことを言ってくる。確かに僕の体は康介と比べたら貧相かもしれないけど、細いとはっきり言われるのは同じ男として少し不愉快だった。 「そっか。それがいいと思うよ。俺、なんだか竜太君の柔らかくて気持ちいい体、好きだよ」 「ちょっと、そんなに揉まないでください。あ、やだ、くすぐったい」  実邦さんの手が僕の二の腕から腰にまわり、脇にかけてスルスルと撫で上げてくる。結構な力でグイッと引き寄せられてしまい、慌てて僕は体を逸らした。 「おい、実邦! そんな風に竜太君に触んなよ。失礼だろ!」 「えー、いいじゃん男同士なんだし、ほら、見て可愛い。赤くなってるー」  すっかりご機嫌で実邦さんは僕の頬を指先で突いてくるから、流石に一樹さんも声を荒らげ注意する。まあ「可愛い」と揶揄われるのは良くあることで慣れっこだから、僕はさほど気にしてはいなかった。顔が赤いのはもちろん照れているのではなく、お酒のせい。 「実邦さん、酔ってる? 距離近い」  腰に回された手がいつの間にか僕の胸元まで伸びていて、サワサワと弄られた。

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