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47 勘違い
「康介君はさ、そんな不毛な恋愛なんてやめて、俺にすればいいのに……」
「別に不毛じゃないし。それにさっきも言ったけどさ、俺は一樹さんとは付き合えないし、一回だけとはいえエッチだってできないよ」
俺は好きな人を裏切れないし、修斗さん以外にはそういう気になることは絶対ないから。それに俺が「抱かれる」なんてそもそも無理な話だ。
「でも、俺のことを好きだって言ってくれたのは嬉しかったよ。ありがとう」
俺が一樹さんにそう言う目で見られてたなんて夢にも思わなかったけど、人から好かれるのは悪い気はしないし嬉しいと思う。一樹さんは納得するまでしばらくグダグダ言っていたけど……
「うーん、康介君、ほんと変にバレて訴えられないように早めに見切りつけたほうがいいよ? 気をつけなね」
「……? 訴えられるってなんでよ、そんなことないから。どんな心配だよ」
「いや、まあいいや。康介君いい奴だし俺の最推しだからさ、好きな気持ちはわかるけど、日陰の恋じゃなくてちゃんと報われるいい恋愛しような」
「は? 最推し? て、いい恋愛してますから! 俺、ちゃんと報われてるからね? さっきから何なの、失礼だな」
さっきから哀れみのある目で見てくるし、なんなの? なんて思ってたら、とんでもない勘違いをされていた。
「だって不倫だろ? そんなのろくでもないじゃん」
「ちげえよ! 不倫じゃないからね!」
やっと一息ついて、とりあえず喉が渇いたから水をもらった。
やっぱり少し気まずいのは否めない。一樹さんはきっとこれからも今までと変わらずに俺に接するんだろうな、てのはわかる。俺も気持ち切り替えなきゃな。あのジムに通い始めてだいぶ経つし、気まずいからって今更違うところに通うのも面倒だ。
「なんか色々面倒かけました。俺、もう帰るね。酔っ払いの面倒見てくれてありがとう」
「もう酔いさめた? 一人で帰れる?」
「誰かさんのせいでとっくに覚めたわ。ギンギンだわ」
軽口を交わしながら一緒に玄関を出る。いいって言ってるのに、少し送ると言ってついてきた一樹さんにまだしつこく「やっぱりお試しで付き合ってみない?」なんて言われながら、さっきまで呑んでいた店の近くまで歩いた。一樹さんの家、めっちゃ近くだったんだな、なんて驚きつつ、俺の家まで来られても面倒だからこの辺りで帰ってもらおうと立ち止まる。「康介君、次はいつ来る? 最近ジムさぼりがちだよね」と痛いところを突かれ、最近忙しくて……と言い訳をしてたら誰かに肩を叩かれた。
「あ……」
「よお、なにやってんの?」
振り返ったそこにいたのは修斗さん。隣には可愛い女の人が二人。こんなところで出会すのも珍しいし、俺は隣の女が気になってしょうがない。
「だれ? 知り合い?」
「なにー? だれぇ?」
修斗さんと女二人が俺に向かって同じことを言っている。おまけによく見たら一人の女は修斗さんの腕をとって引っ付いてるし、お前が誰だよ馴れ馴れしいな。
「通ってるジムのトレーナー」
「ふうん……もう帰るんだろ? 一緒に帰ろ」
修斗さんは隣の女なんていないかのように腕を払って俺に言う。一樹さんは黙ってるけど、さっき小さな声で「修斗だ」って言っていたから、モデルの「修斗」だとバレバレだった。
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