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59 真夜中の訪問者

 夜中、モゾモゾと動く何かに気が付き目が覚めた。 「あ……わりぃ、起こした……」 「んん? あ……まねさん?」  半分寝ぼけたまま、僕は周さんをベッドに迎え入れる。深い眠りについてからどれくらい経ったのだろう。現実と夢の中の境界もあやふやなまま、ちょっとお酒臭い周さんに抱きついた。眠気で重たい瞼をこじ開け、なんとか「お帰りなさい」と声をかけると、周さんは僕に優しくキスをする。「竜太──」と囁く周さんは、唇を重ねたまま僕の耳を弄るから、耳の弱い僕は力が抜けて情けない声をあげてしまった。 「あ、周さん……あっん、ふぁ……あっ、待って」  突然の刺激にじわりと目が覚め、思わず小さく抵抗をする。  普段は互いに次の日が仕事の時は、セックスはしないようにしていた。それは僕にかかる負担を配慮してくれてのことだとわかるからその気遣いが嬉しいしありがたく思っていた。常に体を交えなくても、そのことで不安になったり不満に思ったりすることはなく長いことそういう生活が当たり前になっている。それなのに今の周さんは明らかに僕を求めている。このまま拒み続けてもいいのだろうけど、僕は今日のライブをちゃんと見られなかったことを後ろめたく感じているせいでなんとなく抵抗できなかった。  周さんの指と舌が僕の体をゆっくりと這う。ゾワゾワと巡る快感に僕はモジモジと体を捩り周さんにしがみつく。 「ん……周さん、あっ、あの……」 「なに?」 「あ……僕……今日は……準備してないから……ひゃっ……あっ、待って……」  ベッドに潜り込んでしまった周さんは器用に僕の下着を脱がせると、躊躇いなく露わになったそこを口に含んだ。身体中弄られながらの強烈な刺激に無意識に腰が浮いてしまう。周さんの熱を帯びた舌先が悪戯に僕を刺激し弄ぶ。耐性ない僕は果てそうになるのを堪えながら、与えられる快感を逃そうと周さんから身を離した。 「逃げるなよ。いいんだ……俺がしたいだけだから。イっていいよ、竜太」 「んっ……だめ、あっ、あっ……ほんとにイっちゃうから、待って」  抵抗虚しく、僕はあっさりと吐精し脱力する。周さんはそれでも僕の体に覆い被さるように抱きついて離れず、弄る手を止めてくれない。普段と違ったしつこさに、珍しく酔っ払っているようにも見え少々戸惑う。 「あ、周さん? 僕も──」 「いい……眠てぇだろ? ごめんな、竜太に触れたかっただけだから大丈夫」 「え? でも……周さんも」  自分ばかり一方的に気持ち良くしてもらってお終いにできないと僕は周さんの体に手をまわすも、「俺はいいから」と拒まれてしまった。確かに準備もしていないし明日のことを考えると早く寝たほうがいいのはわかっている。でもいつまでも僕から離れず首筋やら胸元にキスをしたり舐めてみたり、ゴソゴソと弄られ続けてれば僕だってその気になってしまうのは自然なことだった。 「なあ竜太ぁ……俺、かっこよかったよな?」  周さんは僕を抱きしめる手を強め、少し甘えたような声で僕に聞く。楽しそうに演奏している周さんが僕は昔から大好きだ。常にそう思っていることだってわかっているくせにわざわざ聞いてくる周さんが可愛い。 「はい、今日もかっこよかったですよ。ちゃんと見られなくてごめんなさい」    だから、じゃないけどそのまま僕からキスをし周さんの下着を脱がせようと手を伸ばしたら、やっぱり「いいから」と拒否されてしまった。

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