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65 二人で過ごす休日

 気まぐれで突然僕の部屋に来る周さんのために、ベッドの隅で眠るのが習慣になっていた。  ふと人の気配で目が覚めると、ソファに腰掛けゆったりしている周さんの後ろ姿が見えたから僕は再び安心して眠りにつく。そういえば明日は休みで周さんも特に予定がないって言ってたっけ……  久しぶりに一日一緒にいられるな、と、嬉しく思いながら夢の中に落ちていった──  僕を抱えるようにして眠っている周さんを起こさないよう、そっとベッドから抜け出しシャワーを浴びる。普段より少しだけ朝寝坊をした朝は時間もゆったりと流れているようで心地良い。昨晩周さんが一人で晩酌をしていたらしい残骸を片付けていると、置きっぱなしになっていたスマートフォンがぶるぶると震えていた。一瞬見えた着信の名前が圭さんだったような気がしたから、僕は周さんを起こしに行く。きっと眠りについたのは遅かったと思うからもう少し寝かせてあげたかったけど、急ぎの用事だったらいけないから。 「周さん、おはようございます。起きて、ねえ、周さん?」  寝ている周さんの隣に潜り込み、そっと頬にキスを落とした。僕が軽くキスをしたからって全然起きる気配がない。両頬に順番にキスをして、今度は鼻。次はどこにキスしようかな? と顔を眺めていたら、やっと目を覚ました周さんと目が合った。 「あ……おはよ。早いな、何時?」  ちょっと寝惚けた周さんもカッコいい。ここまで持ってきたスマートフォンが僕の手の中で何度もぶるぶると震え着信を知らせていた。 「えっと……まだお昼前ですけど、さっきからスマホ鳴ってますよ」  何かゴニョゴニョと言いながら周さんは僕の手からスマートフォンを受け取ると、そのまま見もせずに枕の後ろに沈めてしまう。「まったくもう──」と寝たままの周さんに覆いかぶさるようにして枕に手を伸ばしたら、そのまま抱きつかれてしまい身動きが取れなくなった。  朝のこういったふれあいもいつものことで、僕の好きな時間の一つ。でも今日は珍しく二人の休みが揃っているから一日中ベッドの中で過ごすなんてことだけは避けたかった。不機嫌そうに着信を確認した周さんは「大したことない」と再び横になってしまうから、僕は揺さぶりそれを阻止する。結局着信は圭さんからで、本当に大したことではなかったらしい。多少イチャイチャしつつも「今日はこれからデートですよ」と抱きつきながら甘えてみせると、やっと周さんは起き上がってくれた。 「今日は僕の買い物に付き合ってください。あと一緒にランチしましょ」  デートらしいデートをするのは久しぶりだから、僕はちょっとだけ浮かれて身支度を整える。周さんはというと、いつもと変わらずのんびりと支度をし、まだ少しだけ眠そうな顔をして帽子をかぶった。  休日の昼間の街中は人通りも多くて、人混みの苦手な僕はその波に酔ってしまいそう。でも周さんはそんな僕の事をわかってくれているから、僕より頭ひとつ分背の高い体で守ってくれるように体を寄せて歩いてくれる。昔はそんなに密着したら……とか、何かとまわりの目を気にしていたけど、今ではちっとも気にならない。自分が思っているほど人は見ていないんだ。街中ですぐに声をかけられてしまう修斗さんと違って、周さんはあまりそういうのはないから僕らはさほど気にせずに外を歩ける。それに、女の人に声をかけられる修斗さんと、声をかけてくるほとんどが男の人の周さんの違いもあるのだろう。 「どこいくん?」 「あ、近く同窓会があるので、その時に着ていく服を買いたいなって」  僕はよく行くセレクトショップに向かって歩いていた。

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