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68 同窓会

 周さんとの久々のデートから数日後。  僕は康介と共に同窓会の会場に向かっていた── 「俺はちょくちょく真司あたりとは会ってるけど、竜は?」 「いや、僕は康介くらいしか会ってないな。志音も最近は忙しそうだしね」 「あぁ、あいつ今日は来るんだっけ?」 「仕事おわりに間に合えばって言ってたけど…‥会えるかな」  郊外にある、古い洋館のような佇まいのレストラン。外観はこじんまりとした印象だけど、中に入るとガーデンテラスもあるのがわかり開放感のある素敵な店だった。 「ねえ康介。ここってさ、なんだか敦さんが悠さんにプロポーズしたお店に似てるね」 「あー、ほんとだ。あったな、そんなこと。懐かしい」  店内の廊下を進み、大開口の窓から見える手入れのされた庭を見て、幸せのお裾分けをもらった当時の様子が蘇る。 「プロポーズって言ってももはや結婚式みたいな感じだったけどね」 「それな! よく覚えてるよ。俺、感動してちょっと泣いたもん」 「僕も」  あの時の僕らはまだ高校生で、互いの恋愛のこと、些細なことでも大いに悩んだり葛藤したりしていた。そんな中の敦さんの公開プロポーズ。たくさんの人に囲まれて、敦さんは悠さんにプロポーズをし、僕らは二人の幸せになる覚悟を見せられた。あの何にも動じなさそうな敦さんが誰にでもわかるほどに緊張した様子だったのがすごく印象的で、康介は「ちょっと泣いた」と言うけれど、僕は感動しきりでちょっとどころかめいいっぱい泣いてしまった。 「確かあの後すぐだったよな? 成人してすぐ……今度は志音が高坂先生の籍に入ったの」 「そうそう! 僕びっくりしちゃった! たしか養子縁組したんだよね?」  成人して初めて会った時に志音から報告された。もちろん仕事のこともあるし表立ったことはなく、一部の人間しか知らない極秘扱い。それでも幸せそうな志音の顔ははっきりと思い出せる。 「まあいろんな「愛」のかたちはあるんだろうけど……」  悠さんと敦さんは「パートナーシップ登録」、志音と高坂先生は「養子縁組」をした。形は違えど互いが納得して、そして幸せになっているのならそれに越したことはない。僕と周さんはと言えば、なんの約束もなくただ好きだから当たり前に一緒にいる。それは高校生の頃から変わらない。そんな僕らの形にはこれと言って不満もない。だけど正直、少し羨ましいと思うこともあった。 「養子縁組は親子になっちまうんだろ? それはなんかなぁって俺は思うね」 「うん……」  康介は自分と修斗さんに置き換えて考え、「全然イメージつかねえな」と首を傾げている。確かに配偶者ではなく親子の関係になってしまうけれど、間違いなく同じ姓を名乗れる「家族」にはなれるから、やっぱり僕は少しだけ羨ましかった。  少し遅れて到着した僕らは入口で手短に受付を済ませ、店の中をぐるっと見渡す。今日は貸切らしく、立食スタイルのテーブルには美味しそうな料理も並んでいて立ち話をしている人たちも見てとれた。会場の中は皆各々楽しそうに盛り上がっていて知った顔もちらほら見える。僕は友達付き合いが多かったわけではないけど、懐かしい面々を見ていると一気に思い出が溢れてきて、高校生に戻ったような気持ちになった。 「うわ、みんなあんま変わらねえな」 「卒業後、割とすぐに同窓会はあったみたいだけど僕と康介は参加していなかったからね。何年ぶりだろう?」  確かに高校生の時の姿のまま、多少は大人びてはいるものの、皆当時のままに見えた。康介は運動部の助っ人ばかりやっていたからか僕と違って友人も多く、気がつけば知らない人たちに囲まれ少し離れたところに行ってしまった。僕も誰か話せる人は……と、いくつかできあがっている数人のグループに目をやると、その中の一人が振り返り僕の顔を見て破顔した。

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