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70 結婚発表のよう
「あっ! それ!」
真司君のスマホのロック画面に写っていたのはなんとビックリ、周さんたちの写真だった。
「あ……やべ、なんか恥ずかしい。いや、ほら、一応俺もファンだし? 単にカッケーなって。あと、俺の知り合い〜って言って自慢してる」
「………… 」
「だめ?」
「ふふ、ダメじゃないよ。かっこいいよね。僕もファン」
「竜太の場合はファンっていうより特別だろ?」
「まあそうだけど──」
少し揶揄われつつ、それでも周さんたちのことを褒められると僕も素直に嬉しくなってお酒がすすんでしまった。もう一杯くらいなら大丈夫かな、と僕は酒をもらいに振り返るともう一人懐かしい顔が目にとまった。
「高坂先生っ!」
思わず大きな声で呼んでしまい、周りの目が一斉に僕に向く。ちょっと恥ずかしくなり目を泳がせていると、高坂先生はわざわざ僕らの方に来てくれた。
「相変わらず可愛いね、竜太くん。お酒飲んじゃって大丈夫? このあとお迎え来るのかな?」
「あ、いえ、大丈夫です」
さっきまで見つけられなかったはずの高坂先生はビシッとしたスーツ姿で、他の先生方と比べて一際目立っていた。志音じゃないけど「モデル」だと言われても納得なかっこよさに僕らはしばし惚けてしまう。更に志音が来たらここだけなんだか別世界になりそうで、ちょっと可笑しかった。志音は仕事が終わり次第来られれば来ると言っていたけど、どうなのかな? と、思わず高坂先生に聞きそうになったけど、ここにいる皆んなは先生と志音のことは知らないはずだから慌てて黙った。
「……先生、今日はなんだか雰囲気が違いますね」
「そうでしょ。ちょっと張り切ってめかしこんじゃった」
そう言って笑いながら、髪をかきあげる。その指にはシルバーに光る指輪が小さく存在感を主張していた。
「あれ? 先生、その指輪って……もしかして!」
薬指の指輪にいち早く気がついた斎藤君は、興奮しきりで指摘する。
「ああ、これ? どう?」
まるで婚約発表をする芸能人のように、先生は手を顔の横に上げ得意げに僕らにその指輪を見せつけた。そしてなぜか頬を赤くして斎藤君もモジモジと手を上げる。
「あの……実は僕も」
そう言って上げた斎藤君の手の指にも光る物が。「え? まさか」とみんなが注目する中、真司君の「いや、なんで二人の結婚発表みたいになってんの?」とツッコミが入った。
斎藤君は職場で出会った人と結婚をしたらしい。なんと授かり婚なのだそうだ。おめでたいやらびっくりやら、嬉しいやら。
「嘘みたい! 斎藤君いつの間に……てかお父さんになるんだね。おめでとう!」
突然の報告に僕らもびっくり。祝福の言葉の中、高坂先生も話し始めた。
「僕の場合は結婚じゃないんだけどね。お守りみたいなもんかな? ほら、君たちと違っていい年だからさ」
結婚はしてないけど「恋人」はいますよ、というアピールなんだと高坂先生は笑う。その指輪の本当の意味を知っているのは僕と康介だけ。志音とのペアリングなのだろうけど、そもそも指輪を先生が身につけていることがちょっと意外で驚いた。斎藤君と真司君に至っては高坂先生に特定の恋人がいること自体に驚いている様子だったけどね。
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