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73 お開き

 いつの間にか修斗さんと敦さんも来ていて、久しぶりの会話に花を咲かせる。相変わらず康介は敦さんに突っ掛かっていて、それを修斗さんは楽しそうに眺めていた。仕事とはいえ敦さんと修斗さんが一緒にいるのが気に入らないのだろう。さっきまでおじやを食べてシメモードだったはずの康介は更にあおるように酒を飲み始めてしまっていて、酔っ払っている康介は面倒臭いことこの上なかった。 「そろそろさ、俺、康介連れ帰るよ。ちょっと飲み過ぎ。めんどくさいんだよこうなると……」 「めんどくさいってなんすかっ! 誰のせいで……あ! ほらもう、またそんなカッコいい顔晒して……」  康介は修斗さんの頬を両手でぎゅっと挟むと「面倒臭いなんて言わないで」と顔を寄せる。キスされそうになった修斗さんは慌てて康介の手を退かすと、言わんこっちゃないと呆れて笑った。酔っ払い状態の康介はいくらでも見たことがあるけど、修斗さんにああやって絡んでいるのを見るのは初めてかもしれない。普段は揶揄われてタジタジな康介が逆に積極的になっていて、修斗さんの方が少し焦っているように見えて新鮮だった。   「なんでいつも敦さんと一緒なの? ん?」 「いや仕事だからね。康介? ほら、帰るよ……あっ、あ……やめろって、ここ家じゃねえって……」  修斗さんに絡みつくように抱きついてしまっている康介は、周りお構いなしに修斗さんの耳元に顔を埋める。「耳弱いの可愛い、大好き」なんて囁いているのを聞いてしまった僕は、修斗さん同様顔が赤くなってしまう。 「康介! いい加減にしろって。やらかしたーって、後で後悔すんのお前だろ。知らねえぞ」 「いいんれすぅ。ここにいるみんなは俺たちのこと知ってるんでー。修斗さんは俺のもんだって知ってうんでぇ……」 「なんなの? 今日の康介、変な酔い方してない?」    困り顔の修斗さんは迫ってくる康介の顔面を手で押さえながら、僕の方を見て首を傾げた。確かに今日だって普段と同じように飲んでいたはず。早い段階で酔っ払っていたとはいえ、いつものことだった。  けれど康介も結婚に関して思うことがあるのかもしれないな。修斗さんの顔を見てたかが外れちゃったのかもしれない。 「康介は、修斗さんのことめちゃくちゃ愛してるってことですね。うん」 「……何それ。竜太君も酔ってるでしょ」 「全然? 酔ってないです」  僕は誰よりもお酒に弱いことを知っているから、飲みすぎないようセーブしている。でも、今日みたいな日はやっぱり嬉しくて、楽しくて、いつもより少し多めに飲んでしまっていたのは確かだった。 「昔はグラス半分も飲まないうちに酔っ払ってた竜太君だったのに、大人になったね。よしよし」  修斗さんは僕を揶揄うようにして頭を撫でる。教師になって子どもたちを褒めることはあっても、自分がよしよしなんて頭を撫でられるなんてことはないから、ちょっと嬉しい。でもヤキモチを妬いた康介が「俺も!」と修斗さん目がけて頭突きするように飛び込んでいったせいで、怒った修斗さんに「もう! 康介は酔い過ぎ! はい、帰るよ!」とお開き宣言をされてしまった。  

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