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81 意地張る

 そこに写っているのは、スタジオと思しき場所のソファでうたた寝をしている周さんに寄りかかるように座っている望君の姿。こういうのを撮っているのはいつも一緒にいるスタッフなのだろうけど、康介も言うとおり、なんでこういった写真ばかり載せるのだろう。心配する康介の手前、僕は笑い飛ばしたけど内心はやっぱり面白くない。よくよく見れば周さんは寝ている写真ばっかりだし、どれもこれも目線は合ってないから隠し撮りみたいなものだ。周さん自身はSNSは見ないから恐らく気づいていないと思う。周さんに限って「浮気」の心配はないけど、望君の普段の言動から僕に対しての当てつけのように感じてしまい、そちらの方が不愉快だった。  望君には先日手当をしてもらった時に散々言われた挙句「いつ別れる?」「なんなら俺にしとく?」なんて揶揄われた。そのことを僕が周さんに言わなかったのは、心配をかけたくなかったのもあるけど、こんな話をしたところで無駄に周さんを不快にさせるだけだと思ったからだ。仲が悪いとはいえ同じバンドのメンバーなのだから余計ないざこざなんてない方がいい。ただでさえ僕のせいで周さんのパフォーマンスが落ちているなんて言われているんだ。 「──竜? 聞いてる?」 「あ……うん、ごめん、なに?」  画面の向こうでは周さんと望君の仲の良さをアピールしているようだけど、二人の仲の悪さを知っている俺らからみたら滑稽でしかないよな、と康介も言う。「はぁ……」と溜息とともに僕はお代わりで運ばれてきたばかりのグラスを一気に空け、テーブルにトンと置いた。馬鹿にされているようで考えれば考えるほどモヤモヤしてくる。お酒の影響もあって僕はその感情を隠すことができなくなっていた。 「なあ、大丈夫か? 飲むペース……もしかしてなんかあったのか? 顔、凄いぞ……」 「どんな顔だよ」 「それそれ、竜らしからぬ怖い顔」  そう言って康介は笑う。僕だって腹がたてば怒るし不快な表情だってする。まあ、康介には隠し事はできないのはわかっているから、望君に言われたことを少しだけ愚痴をこぼした。 「え? 俺、今までそんなこと感じたことねえぞ? 周さんのパフォーマンスが落ちるって? あの人いつでも絶好調じゃん。周さんに限らずだけどさ。そんなんただの言いがかりだって、気にすんな」  そうは言っても僕のせいでなんて言われてしまえば多少なりとも気になるもので、「そうだね」と同意しつつも燻った気持ちには変わりなかった。  帰宅後も周さんからの連絡は特にない。  連絡がないのだっていつものことなはずなのに、昔のようなウジウジとした嫌な自分が顔を出す。普段なら「おやすみなさい」と挨拶メッセージを送るのに、この日の僕は初めて「わざと」周さんにメッセージを送らなかった。

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