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第4話

「そういえばさ、ドレスの撮影する時に遠出するだろ?」 「山奥のチャペルを選びましたからね」 「ついでに新婚旅行しようぜ!」 「新婚って……。まあ……間違いではないかもしれませんが……、籍を入れてないのでやはり間違いか……?」 「細かいことは考えんなって! 結婚式したら新婚だから、新婚旅行!」 「そう言うってことは、何処か行きたいところでもあるんですか?」  小焼はおれに尋ねながらカバンから飴玉を取り出して噛み砕いていた。飴だから少しくらい舐めてやりゃ良いのに一瞬で、ガリガリ……、砕ける音がする。3個ぐらい噛み砕いていた。暖房をつけるので窓を閉め切っていてタバコも吸えない。口がさみしいから小焼に飴を貰おうと手を差しだしたら、揉まれた。 「いや、飴くれってことだよ! 揉んでくれじゃなくて!」 「肉球がありそうなくらいにふにふにした手ですね……。で、何処行くんですか?」 「あー、えーっと、温泉に行きたい。ぅえ、何だこれ酸っぱ!」 「新発売のレモンキャンディです」  小焼から貰った飴はすごく酸っぱかった。舐めてるとだんだん甘みも感じられるけど、最初はパウダーで酸っぱさが際立っていた。  温泉って言ったの無視されたか? 聞いてたか? 「小焼。おれ、温泉に行きたい」 「はい。聞こえてましたよ」 「それなら返事してくれよ。飴の説明は後回しで良かったからさ」 「はぁ? 温泉って……、貸切の露天風呂付きですか?」 「それはちっとわかんねぇけど、貸切の露天風呂なら広々して楽しそうだな!」 「……野外でセックスするのかと思った」 「おまえ、エロ動画の見過ぎじゃねぇか?」  小焼の性癖を考えたら野外プレイ多そうだけど。だって、強姦モノが多いし……、だいたい外でヤッてるものだったはずだ。  って、あれ? 「するのかと思った」って言ったってことは、したいってことか? 「先週巴乃(ともえの)メイが新作を出したんですよ。それが露天風呂だったので」 「タイムリーな話題だったってことな。ってか、メイちゃんまだセクシー女優してんのか? アイドルもやってんだろ?」 「一時期に比べたら作品数は減ってきましたね。現役のアイドルが色んな男に抱かれてるの興奮しませんか?」 「それはおまえの性癖だ」  小焼って、好きな女が目の前で知らない男に犯されてるの見て興奮するタイプか? あれかな、マジックミラーのやつとか好きなタイプか。彼女にマッサージのサービスするって言って、彼氏だけ外に出されて、彼女は車内でナマで中出しセックスするやつ。  いや、小焼の性癖について考えてどうすんだ。 「で、温泉は……?」 「夏樹が行きたいって言うなら、私も行きます」 「そっか。良かった。断られたら泣くとこだった」 「断るもなにも、チャペルに行くのに宿泊する必要がありますし……、それで温泉って言ったんじゃないんですか?」 「おう。なにもかもお見通しって感じだな」 「付き合いが長いですからね」 「それもそうだな!」  幼馴染ってのは、相手のことがなんとなくわかるもんだ。言葉の壁がたまに発生するけど、今はなんとかなってる。照れてる時、小焼は英語で話すからわかりやすい。最近は英語聞いてねぇけど。  英語も聞いてねぇけど、ふれあいも少ない気がする。気まぐれにキスしてくる時はあるけど、本番行為は一切してない。おれから誘ったら「『待て』」と言われることはわかってる。おれに小焼を押し倒して無茶苦茶にできるくらいの力があったら良かったんだけど、絶対そんなことしたらぶん殴られて最悪の場合は死ぬ。ワンパンで昇天しちまう気がする。  小焼はしたくねぇのかな……。こいつ、食欲と性欲が一緒になってるっぽいから、腹が減ってたらムラムラするんだと思うけど……、おれを食べ物として見てきたら怖いし……射精する時に噛む癖があるから、おれの肩に小焼の歯型がつきがち。とりあえず意思表示だけするか。 「なあ小焼、セックスしたい」 「今日ですか?」 「うん。ダメか?」 「準備してませんし……」  そう言うとは思った。準備してる時は逆に小焼から誘ってくるし、なんならおれが押し倒されるくらいだ。  車を走らせて、小焼の家に到着。 「寄ってかないんですか?」 「良いのか?」 「したいって言ったのはお前だろ」 「あ、お、おう。わかった! 車を家に置いてから行く!」 「準備しておきます」 「すぐ行くから!」 「すぐ来てもできませんよ」  そう言い返しつつ、小焼は家に入る。  おれは自分の家に車を走らせる。やった。意思表示って大事だな!  車を置いたら小焼の家にゆっくり歩いて向かおう。準備してくれるはずだから!

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