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第5話

「っ……!」  毎度のことだが、この過程がひどく妙な気分になる。抱かれるために準備する……と考えたら、なんとも言えない。  鏡に映る自分に嫌気がさす。どうして既に勃ってるんだか。これだと夏樹のことばかり言ってられない。もう身体が覚えてしまったのかもしれない。洗浄をしたから、後は抱かれるだけだと……。それはそれで嫌だな。腹の虫が鳴いている。何か食べたい。 「小焼ー!」  もう来たようだ。小型犬がキャンキャン鳴くような声が聞こえた。足音はこちらに向かっている。 「まだシャワー浴びてるので、先に部屋に行って待っててください」 「おれもシャワー浴びる!」 「はぁ?」  まあ、ホテルでも浴びるものだしな。だいたいは。よっぽど燃え上がってるようなことが無い限り、部屋に入ってすぐ行為を始めるようなこともないだろうし……。私の主観だが。  夏樹が浴室に入る。私の家の何処に何が置いてあるかを把握しているので、タオルも準備してきたようだ。ある種の迷惑行為とも感じられる。 「もう洗浄終わってんのか?」 「ええまあ……」 「やりたかったなぁ、腸内洗浄……」 「夏樹がしたら本格的過ぎるんですよ」 「そりゃ、おれ、超スーパーハイパーキュートなスペシャルスポーツドクターだからな!」 「まだ言うんですねそれ」 「おう! 聞きたかった頃だろ?」 「別に……」  聞きたいとは思わないな。  夏樹はスポンジにボディソープをつけて、泡を作って遊んでいる。やっていることが小学生、いや、幼稚園児並みだ。泡をたくさん作ったところで、私にくっつけて遊んでいる。 「あの、洗ってくれるのか遊ぶのかどっちなんですか?」 「おれが洗って良いのか?」 「どっちでも良いですけど、私を泡まみれにしないでください」 「じゃあ、洗う!」  言わない限りずっと遊んでそうだったから言って良かったな。  夏樹は人懐こい犬のような笑顔を浮かべて、私の胸にスポンジを置いた。なんとなくわかっていたが、やっぱりそうくるか。 「胸ばかり洗おうとしないでください」 「だ、大丈夫! 胸以外にも洗うから! ちんこも洗うから!」 「そこは別に触らないで良いです」 「既に勃ってんのにか?」 「っ、あ!」  急に握られて変な声が出た。しかもそのまま扱かれて、ちょうど良い刺激に痺れてくる。 「小焼。おれのエクスカリバーも触ってくれ」 「まだその言い方するんですかっ」 「だって、宝剣だからな! いだだだっ、もっと優しくしてくれぇ!」  優しくと言われても他人のちんこを掴む力加減なんてわからない。夏樹の顔を見て判断しようとしたら、キスされた。そうなるとは思った。  舌を絡めて、吸って、唾液を飲みくだす。唇を話せば、銀糸が繋がる。すっかり紅潮した頬が愛らしい。ちっちゃくて可愛い恋人だ。……こいつに、抱かれる。改めて自覚したら、身体が震えた。腹が減った。ほしい、はやく、ほしい。 「夏樹、もう、ほしい」 「へっ、ここでか? ゴム持ってきてねぇから、待ってろ」 「そのままでいい」 「駄目だって! おまえ、この前腹痛いって、ぶん殴ってきたろ!」  ぶん殴った理由は腹が痛かったからではなくて、夏樹の回数が多いからだったんだが、言い返す間も無く、夏樹は浴室を出て行った。  はやく、ほしい。

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