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第12話
缶ビール半分だけでも頭がふあふあして気持ち良い。
小焼の手料理はいつでも美味いし、最高だ! 同棲できることになって最高だ!
だけど、それには色んなことをしないといけなくなる。面倒なことは後回しにしたくなる。酒で頭もまわんないし、どうでもいっか。
「小焼ぇ、好きぃ」
「はいはい。酔うのが早い」
「酔ってなくても好きだ!」
「近くにいるのに大声で言わないでください。ただでさえ夏樹の声はよく通るんですから」
「えへへ、そっかぁ。好きぃ」
「はぁ……」
溜息を吐いている姿も好き。どんな姿の小焼でも好き。
泳いでいる時は美しいし、人魚って本当にいるんだなって思うくらいに綺麗だし、そんでもって普段は格好良いし、おれの自慢のパートナーだ。おれの可愛いネコちゃんだ。
食べ終わったら小焼の部屋に移動。ベッドに転がったらすぐに寝落ちした。
翌朝。起きてすぐ見えるのは、ストレッチしている小焼。日課のジョギングのために朝早くから準備運動とストレッチをしているんだ。ストレッチしてる姿を見たら、彼の体がどれだけしなやかなのかよくわかる。
見た目のわりにY字バランスできるくらいにやわらかくて体幹がしっかりしてるんだ。もしかしたらI字バランスもできるんじゃねぇかな。
「おはようございます」
「おはよー」
「私は日課のジョギングに行ってきますが、夏樹は……、散歩しますか? 首輪をつけて」
「それは遠慮しとくよ。今の時間だと犬の散歩してる人もいっぱいいるから、通報されちまう」
「夏樹は犬ですよ」
「違う違う。おれは人間だから。おまえにとって犬でも、他人が見たら人間だ。まあ、おれは犬のように賢くて従順だけどな!」
「賢い……ですか……?」
「疑問に思うのはそこかよ!? これでも医師免許持ってんだぞ!」
「それなら賢いか」
小焼が少し考える仕草をしてからそう言うから、思わず笑った。そしたら彼は不思議なものを見たかのような表情をするんだ。おれがどうして笑ったのかわかってねぇんだと思う。
こういうところが愛おしくて仕方ない。抱き着いたら、ぞんざいに床に投げ捨てられた。
「アイタタ……。投げるならもっと優しくしてくれよぉ! ご褒美になっちまうぞ!」
「それは困りますね。もっと優しくします」
「ご褒美にしたくねぇの?」
「なんだか腹が立ちますからね」
はっきり言ってくれるから素直で助かる。この素直さが逆に他人を傷つける時もあるんだけど、それはそれ、これはこれだ。
それにしても、トレーニングウェアって何でこんなにピッチリしてんだろ? 小焼のボディラインがはっきりわかっから、すっげぇエロい。言ったら殴られそうだから言わないけど、こりゃ目に毒だ。
これだと敏感乳首が擦れそうだけど、大丈夫なのか?
「なあ小焼。その服って乳首擦れねぇか?」
「大丈夫ですよ。ブラジャー買いましたんで」
「へえ。…………って、ブラジャー!? ブラジャーなんて買ったの!? 何サイズだ!?」
「Fですね」
「さすがのFカップ! ありがとうございます!」
「何に感謝してるか知りませんが、フリーサイズのFですからね……」
「いや、おまえはFカップだぞ。前の健康診断でバストサイズ測定したろ」
「そういえばそういうこと言ってましたね」
「だろ? Fカップなんだぞおまえは!」
「それを大声で言われる意味がわかりませんが、ジョギングに行ってきます」
「おう! 行ってらっしゃい!」
「夏樹は首輪をつけて待っててください」
「あい。わかった!」
全く意味がわかんねぇけど、おれが返事をしたら小焼は嬉しそうに微かに笑ってた。よし、首輪つけて良い子で待っておかねぇとな!
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