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第32話

 小焼は腹いっぱい食べられて満足そうだ。食事制限をさせる必要が無いくらいにエネルギーを使う活動をしてるけど、周りから見たら食べ過ぎに見えそうだな……。  食べるペース自体はそこまで速くないから、しっかり噛んで味わって食べてるし、早食いして雑な食事をしてるわけじゃないから、周りには悪く思われないはずだ。  美味しい美味しいって言いながら食べてるようなもんだし……、表情がゆるんでるの、おれしか気付いてなさそうだけど。  支払いを済ませて、小焼の家に帰る。同棲してるんだなぁって改めて感じる瞬間だ。 「何をニヤニヤしてるんですか?」 「えー? 小焼と一緒の家に帰れるから嬉しいなぁって思ってさ。同棲してるんだなぁって幸せな気持ちになってんだ」 「いい加減に慣れてくださいよ。毎回同じようにニヤつくつもりですか」 「まあまあそう言うなって。嬉しいことは何回も体験したいんだよ。これが当たり前だって思わないようにさ」  両親に話したらビミョーな顔をされた。ふゆしか祝ってくれない。だけど、それが普通の反応だ。男が男を好きってのが、気持ち悪いってのが、両親にとっての普通。  だけど、おれが小焼を嫌いになることはないし、小焼だって……、そうだと良いな。おれよりもむちむちした女のほうが好きだとは思うけど……、嫌いにはなってない、し。  おれが俯いていたもんだから、小焼はおれの顎をガッと掴んで、雑に唇を重ねた。尖った歯が当たって痛かった。唇が切れて血が出た。 「急に暗い顔しないでくれませんか」 「ん。ごめん」 「謝らないで良いです」  おれの唇が切れてようが、彼は気にしない。おれに背を向けて、階段をとんとん……上がって行く。わかってたよ。そういうやつだって。ずっと前から知ってるし、理解してる。おれはいつもその背中を追いかけるだけ。  部屋のドアを開く。小焼はベッドに座っている。 「『サイド』」 「おう」  傍に来いって言うなら、すぐにでも行ってやる。隣に座ったら、首を掴まれて、そのまま倒された。あれ? おれ、襲われる感じ? でも、小焼は準備してないから、単に嫌がらせか?  ぎし、とベッドが軋む。体が熱くなっていく。そりゃ大好きな人に上に乗られちゃ興奮しないわけがないって。 「お前ってすぐに反応しますよね」 「そりゃあ、小焼のこと大好きだからな!」 「はぁ?」 「せっかくだし、すっげぇ面倒臭い男になってやるぜ。小焼はおれのこと好きか?」 「嫌いって言ったらどうするんですか?」 「え。えー、それは、かなりショックだな……」  心が深く抉られる程度には、ショックだ。涙で彼の顔が滲んで見えるくらいに。冗談だってわかってるのに、なんだか苦しい。そんなこと、ないはず、なのに……。 「嫌いなやつ相手にこういうことしない」 「んっ、だよなぁ。いだっ、いだいってぇ」 「痛いほうが好きでしょ?」 「す、きだけど、程度が、あるからぁ……!」  服の中に手を入れられて、乳首を抓られる。電流が全身を駆け巡るくらいには強い刺激に、下半身がもたない気がする。  小焼はおれの反応を見て楽しんでるみたいだ。微かにズボンが膨らんでいるような気がする。そーっと手を伸ばして、ジッパーをおろしてやる。ご立派様の登場だ。 「勝手に触ろうとしないでください」 「おればっか気持ち良くなってたら不公平だって怒りそうだから先手を打とうと思ったんだよ。フェラしたら良いか?」 「喉奥まで咥えろ」 「あいあい。任せろって。おれが気持ち良くしてあ・げ・る!」 「その言い方が気持ち悪いです」 「おまえが好きそうな言い方したのに、そりゃひどいぞ」  おれの上から退いてくれたので、きっちり座る。座ってる状態で咥えたら……、まあ、小焼に頭掴まれてぐいっと奥までぶちこまれるし、そのまま喉射されるよな。

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