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逢いたい
───皐月、今週末は逢える?
香島さんから連絡が入ったのは、月初め3日の午後のことだった。
「……はい、大丈夫です」
声が強張ってしまった。
返事も少し、遅くなった。
『仕事、忙しい?』
心配そうな香島さんの声に、胸がきゅっと締め付けられる。
「……いえ。月末締めが終わって、月初めでちょっと忙しかったけど、今日でそれも終わったから。…金曜日、大丈夫です」
『疲れてない?大丈夫?』
「大丈夫です。ヘーキ、へ……、っ…」
繰り返そうとして、ふっと息が詰まる。
「……本当は、ちょっと…疲れてます」
小さく笑うと、気づかわしげな声で、無理しなくていいよ、と言ってくれる。
優しい言葉に、声が震えちゃいそうだ。
「でもね、俺、香島さんに逢うと癒されるんです。だから、逢いたい…な…」
『っ……』
電話の向こう、息を飲む声が聞こえた。
「俺もだよ、皐月」
甘い声が耳からじわりと沁みこんできて……、携帯をぎゅっと耳に押し当てる。
「香島さんも、俺で癒されるの…?」
『ああ。皐月は、俺の癒しだよ』
あぁ…、そうか……。
嬉しい。───嬉しいな…。
「…香島さん。何か話してください」
『何かって、何を?』
「なんでもいいです。もっと香島さんの声、聴いてたい」
『……いいよ。じゃあ、今日食べたランチのことでも話そう』
「うん!」
皐月、早く逢いたい───そう言って、香島さんは電話を切った。
枕を引き寄せ、抱きしめる。
甘い甘い胸の中に、チクリ、ズキリと感じる痛み。今だけは気付かないフリをして、まだ耳に残る愛しい人の声を、言葉を思い出しては繰り返した。
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