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忘れてた
悠さんが開けてくれた玄関をくぐる。
ウォークインクローゼットに財布とキーケースを置きに行って、携帯をポケットから取り出して………
「あーっ!」
大変なことを思い出した。
「皐月?どうした?」
悠さんが、部屋から声を掛けてくる。
俺、今日夏木ん家に泊まりに行く約束してたんだった。
また行き成り約束破っちゃって……
「悠さん、俺、夏木の家泊まる約束してた。どうしよう?」
「どうしよう、ってなあ…?」
リビングに入ったところで、悠さんに捕まった。
腕の中にギューッと閉じ込められて、髪に頬ずりされる。
「ふふっ、くすぐったい~」
背中に腕を回してぎゅっと抱き返す。
いつもは感じさせない、汗のニオイがする。
俺の為に走って来てくれたんだね。
大好き、悠さん。
「………行きたいの?」
「ん……?」
胸元に顔を寄せてくんくんしてると、鼻をぶに、とつままれた。
「あに~?」
「なに、じゃありません。汗臭いから嗅いじゃいけません」
「臭くないですよー。んっ…でも、ちょっとしょっぱい」
シャツから覗く鎖骨をぺろっと舐めると、慌てたように肩を押された。
お尻の下を支えて、届かないように抱き上げられる。
「なんだよ自分は舐めるくせにー」
「皐月は若くて綺麗だからいいの。俺はもうおじさんだからいけません」
「悠さんはおじさんじゃないもん。大人なだけだもん」
「はいはい。風呂入るぞ」
「まだお湯溜めてないーっ」
「溜めながら入ればいいだろ。ほら、服脱がせてやるから」
悠さんは俺を抱っこしたまんま歩きだす。
頭が当たらないよう屈んで廊下に出て、脱衣所の扉を開けた。
俺を下に下ろしてから、悠さんは先にバスタブにお湯を溜めに行く。
ほんとに、臭くないし汚くもないのに。
ぷう、とほっぺを膨らませると、すぐに戻ってきた悠さんの手のひらで左右からぎゅっと押し挟まれた。
プスーッと口から空気が抜けてく。
なんだよ、噴き出したりして。変な顔にしてるのは自分だろーが!
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