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甘やかしたい

耳朶を、指先で摘む。 「…ひぁっ……」 あ、可愛い声が漏れた。 ここ、気持ちいいのかな? ふにふにと捏ねるように押して、身体がビクビクと震える様を堪能してから、耳朶に唇を押し付けた。 「んやぁっ」 あーもうっ、なんつー声出してんだよ!かわいいなぁ、くそ。 「俺、リュートさんの顔、好きですよ」 低音で囁きかけて、耳朶をはむっ、と唇で挟む。 「ぁあっん……うそ、だ…っ」 「この後に及んで嘘なんて言わねーよ。つか、顔って言うより、リュートさんが好き」 「うそだっ」 「えー?どう言えば信じてくれんの。広川のことはとっくに諦めてるし。…あ、さっきもう来ないって言ったの、リュートさんのこと忘れないと先に進めないと思ったからなんで」 「忘れる…?」 漸く顔を上げた。 なのに、好きだって言ってんのにこの人は、また泣き出しそうに瞳潤ませて…。 ここは、例え怒られたとしても白状する他あるまい。 「…俺、リュートさんのことビッチだと思ってたんで、性処理用のメンツとしてカウントされたらイヤかなぁなんて」 「ビッチ!?…って……!!」 ヒドい!と、さっきよりも強く、ポスンと腹を殴られた。 ポスン、ポスンって。 ……痛めつける気あんの、ソレ?全然身体に響かない。 なのに、胸の奥にこの人の痛みが染み込んでくる。 「ごめんね、リュートさん。好きだよ」 「っ……!」 見上げる瞳から、雫がポロリと零れ落ちた。 綺麗だな……。 肌を転がり落ちていくそれを、ペロリと舐めとる。 あごから、頬を伝って、目尻に溜まった涙を吸う。 「ふぇぇっ」 子供みたいな声を出して、リュートさんがしゃくりあげた。 「はいはい。泣かない泣かない」 抱き締めて、背中をポンポンと撫でてやる。 年上だから、なんて気にしてたこと、もうすっかり忘れちゃってんだろうな。 でも、思い出さなくていいよ。 誰よりも虚勢を張って笑って生きてきた貴方を、俺がベタベタに甘やかしてあげたい。

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