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違和感
シャワーを済ませて部屋に戻ると、すっかり綺麗に整えられたベッドの上に、スーツとシャツにネクタイ、それに約束のパンツが乗っていた。
「これ、借りていいんですか?」
「どうぞ。昨日着ていたのは汚れを落としてクリーニングに出しておきますから」
「あ、どもっすー」
あー…、ヤベーっ、リュートさんのパンツだしーっ!
弥が上にもテンション上がるし!
お、Sか。パンツのサイズにSとかあんのな。
ちょっ、コレ食い込んでくるし!リュートさんのパンツが俺の股間締め付けてくるし!!
ワイシャツを着て、ネクタイ締めてくんねーかな…とか、チラッと見てみるも、テーブルに食器を運ぶのに忙しそうだ。
スーツのサイズを確認すると、スリム型のYA6体だった。
ウエスト78cm?俺普通体型だと思ってたからA6体買ってたけど、ウエスト考えたらYA体イケんじゃん。
てか、リュートさんのウエストじゃ、このパンツでもベルト無いとズリ落ちちゃいそう。
…あ、でもこれケツと太ももきつい……。
俺野球やってたからなぁ。ケツ、デケェんだよなー。
ジャケットだけベッドに置いたまま、テーブルにつく。
「どうぞ、召し上がれ」
卓上には、ご飯、味噌汁、焼き鮭、玉子焼き、ほうれん草の胡麻和え。
「何コレ結婚したいーっ」
理想の和朝食そのものだ。
料理上手のド淫乱とか、超理想の奥さんじゃんか!
でも、なんでだ?テーブルの上には一人分の食事、俺の分しか用意されてない。
まあ、リュートさんは夜の仕事だし、朝メシ食う習慣がないのかもな。
「リュートさん」
「はい」
ん……?
返事をしたリュートさんに、なんだか違和感。
「リュートさん?」
「なんでしょうか?」
なんで敬語?それよりなんで、目を合わせない?
そう言えば、風呂出てからずっと、余所余所しくないか?
「俺、8時半に出ようと思うんですけど」
「分かりました。ではそれまでごゆっくりどうぞ」
お茶を煎れて、新しい歯ブラシも用意してくれる。
けど、変だ。絶対おかしい。
「リュートさん」
「はい、なにか?」
「ここに来て、キスしてください」
膝の上をぽんぽん叩いてみせると、眉がピクリと動いた。
昨夜は自ら膝に跨って腰を振っていた人が、舌を差し出してキスを強請った人が、こんな不快な顔をするものだろうか。変だ、絶対!
「召し上がらないんですか?」
テーブルの上の朝食を下げられそうになって、慌てて箸を握って食いついた。
「いただきます!」
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