54 / 298

違和感

シャワーを済ませて部屋に戻ると、すっかり綺麗に整えられたベッドの上に、スーツとシャツにネクタイ、それに約束のパンツが乗っていた。 「これ、借りていいんですか?」 「どうぞ。昨日着ていたのは汚れを落としてクリーニングに出しておきますから」 「あ、どもっすー」 あー…、ヤベーっ、リュートさんのパンツだしーっ! 弥が上にもテンション上がるし! お、Sか。パンツのサイズにSとかあんのな。 ちょっ、コレ食い込んでくるし!リュートさんのパンツが俺の股間締め付けてくるし!! ワイシャツを着て、ネクタイ締めてくんねーかな…とか、チラッと見てみるも、テーブルに食器を運ぶのに忙しそうだ。 スーツのサイズを確認すると、スリム型のYA6体だった。 ウエスト78cm?俺普通体型だと思ってたからA6体買ってたけど、ウエスト考えたらYA体イケんじゃん。 てか、リュートさんのウエストじゃ、このパンツでもベルト無いとズリ落ちちゃいそう。 …あ、でもこれケツと太ももきつい……。 俺野球やってたからなぁ。ケツ、デケェんだよなー。 ジャケットだけベッドに置いたまま、テーブルにつく。 「どうぞ、召し上がれ」 卓上には、ご飯、味噌汁、焼き鮭、玉子焼き、ほうれん草の胡麻和え。 「何コレ結婚したいーっ」 理想の和朝食そのものだ。 料理上手のド淫乱とか、超理想の奥さんじゃんか! でも、なんでだ?テーブルの上には一人分の食事、俺の分しか用意されてない。 まあ、リュートさんは夜の仕事だし、朝メシ食う習慣がないのかもな。 「リュートさん」 「はい」 ん……? 返事をしたリュートさんに、なんだか違和感。 「リュートさん?」 「なんでしょうか?」 なんで敬語?それよりなんで、目を合わせない? そう言えば、風呂出てからずっと、余所余所しくないか? 「俺、8時半に出ようと思うんですけど」 「分かりました。ではそれまでごゆっくりどうぞ」 お茶を煎れて、新しい歯ブラシも用意してくれる。 けど、変だ。絶対おかしい。 「リュートさん」 「はい、なにか?」 「ここに来て、キスしてください」 膝の上をぽんぽん叩いてみせると、眉がピクリと動いた。 昨夜は自ら膝に跨って腰を振っていた人が、舌を差し出してキスを強請った人が、こんな不快な顔をするものだろうか。変だ、絶対! 「召し上がらないんですか?」 テーブルの上の朝食を下げられそうになって、慌てて箸を握って食いついた。 「いただきます!」

ともだちにシェアしよう!