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愛してる証

「待って待って!先にお願い!」 俺のことを突き飛ばしてベッドの下へ転がり下りると、リュートさんは引き出しの一番上を開いて紙とペンを取り出す。 「なん…ですか?」 そしてそれを俺に、ん…と付き出してくる。 ん、だって。ヤベー可愛い。 「僕のこと、好きだって書いて」 けど、…なんだって?言われてることが理解できない。 「は?……はい?」 「それから、何処が……可愛いとか、好きなところも箇条書きで!あっ、顔も好きって書いて」 「あ…、はい……」 真剣な表情から思うに、どうやらフザケているわけでも遊ばれている訳でもなさそうだ。 「出来上がったらサイン……いや、拇印の方がいいかな」 ああ…。ホントに本気みたいだ。 「なら、さっきのリュートさんの鼻血で、血判捺せばよかったね」 鼻をくにくに摘むと、リュートさんは何かに気付いたようにハッと俺の顔を見つめた。 そして、にっこり微笑んでみせる。 それは、昨日の夜にも見た、俺を怯えさせる黒い微笑で……… 「あの、リュートさん…?その手に持った、鈍器的なものは!?」 「ん?あ、ホント。いつの間に持ってたんだろう。なんだろうね、コ・レ」 「下ろした方がいいですよ!絶対!」 「うん。用が済んだら下ろすよ。それより功太、手が邪魔なんだけど。鼻の前から、どけてくれる?」 「お断りしますっ!」 隙をついて鈍器を奪って、リュートさんをベッドへ引きずり上げた。 文句を言う口をキスで塞ぐと、途端におとなしくなる。 シャツを捲り上げて乳首を摘むと、さっきまでとはまるで異なる高い声をあげ始めた。 「リュートさん、あれは後で書いてあげるから…、今はさ、体中に刻ませてよ。貴方を愛してるって証を、ね?」 目で頷いてくれるから、首筋に唇を落とす。 ちゅーっと強く吸い付くと、真っ白な肌に赤い跡が残る。 「やーらしっ」 指先で跡をなぞって感触を楽しんでから、甘い声を漏らして震える胸元に、俺はまた唇を寄せた。 ---------- 『一輪の薔薇』完

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