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ネコは天然[2]

【夏木Side】 「僕は、功太と毎日でも一緒にいたいです。疲れてたら、エッチしなくても、傍にいてくれるだけでいい。 それから、歳を教えられなかったのは凄く歳上だから。なんだか恥ずかしくて…言いたくなくて……。 他に、聞きたいことは?」 「んー、じゃあ、『リュート』って漢字でどう書くの?」 「漢字なんて無いけど。母親が変な人だったんだろうね。それともハーフって強調したかったのか、カタカナ表記で伸ばし棒」 「じゃあ、香島リュートって書くんだ」 文字を想像して、なんだかニヤニヤしてしまう。 そっかー。香島リュート。 広川が結婚したら『香島皐月』になるって喜んでたっけな。 あー、じゃあ俺たちみんな香島姓になっちゃうんだな。 俺のが年下だもんな。 「香島…功太か…」 悪くないな。 「えっ!?」 「えっ、って?」 「まさか……」 リュートさんの顔色が見る見る間に青くなり、泣きべそをかいて香島さんの腕を殴りつけた。 「兄さんのバカッ!」 「いてっ!なんだよ、リュート?」 「功太までネコにしなくてもいいじゃないか!バカーッ!!」 「は?なに、お前タチから転向したの?」 「いや、してないッス」 ボカスカと…いやポコポコと殴り続けるリュートさんの拳を片手で軽くいなしながら、香島さんが微妙な視線を向けてくる。 つか、同じぐらいの身長のリュートさんや広川はネコなのに、俺は似合わなくて可愛くなくて悪かったですね。 可愛いって言われても気持ち悪いけどさ。 「じゃあ何!? 香島功太って。功太も兄さんの籍に入りたいってことじゃなくて!?」 入りたいって…ことじゃねえなぁ……。 どうしたらそっちに話が転がっちゃうんだか。 「リュートさんさぁ、さっき俺と毎日一緒に居たいって言ってくれてなかった?」 「言ったよ!言ったのに…」 なに視線逸らして可愛く拗ねちゃってるんだろう。この人は、まったく……。 「それってさ、香島さんと広川みたいに、ずっと一緒にいたいってことじゃなくて?」 「…そうですけど」 「だったらさ、それって、籍に入りませんか?ってお誘いじゃなくて?」 「えっ?」 リュートさんは俺の言葉に、怪訝そうな表情を向けた。 ……あ、れー…。俺、早まった感じ? そういう意味で言ったんじゃねーよ、とか思われてる?もしかして。 「あの……功太?」 「…はい」 すいません。調子乗りました。 さっき逃げ出そうとしてたくせに、あれ、愛されてる?とか思ったら、俺達もこのままゴールイン?みたいなテンションになっちゃって…… 「僕がお嫁に行くんだよね?」 「は…い……?」 「だから、僕の方がお嫁さんなんだから、夏木リュートが正しいと思う」 「あー………」 天然か。この人、天然か! 「そーだぞ、夏木!俺も夏木が悠さんの側室になりたがってんのかと思っちゃったじゃないか!」 あっちの方で広川も、なんかヤイヤイ言ってる。 なんだよ、ネコって基本天然でなきゃなんないのか?だったら俺には到底なれっこないなー…。 「香島さん…」 「側室ってなあ?可愛いだろ、俺の皐月は」 はいはい、ご馳走様です! だったら『お嫁さん』とか言っちゃってるリュートさんだって可愛いし!! 「あのですね、リュートさん」 そして俺はリュートさんに年下は年上を養子縁組できないのだと教えて、近い未来の約束を交わしたのだった。

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