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邪魔者[1]

金曜の夜。今日は少し遅い時間だけど、いつもとおんなじように休憩室で夏木を待って、二人連れ添って会社を出た。 退勤の際に、出口で会った女性の先輩に声を掛けられた。 「あら、お二人さん。いつも一緒ね。熱い熱い」 彼女はニヤニヤと笑いながら、掌でパタパタと顔を扇いだ。 「そっかなぁ?今日は結構涼しい方だよな」 夏木に尋ねると、 「まあ、しばらく前だったら俺も熱かったかもな」 と言われた。 しばらく前は夏だから、そりゃあ暑いのなんか当たり前だと思うんだけど。 そう言うと、夏木は笑って俺の頭を撫でてきた。 訳わからん! 夏木は最近、急に大人っぽくなった。 いや、もう25なんだから充分大人で正しい歳なんだけど。 でも、そう言うんじゃなくて…。ちょっと前に俺と遊んでくれてた学生ノリの夏木はもうどこにもいなくて、ちょっと淋しい。 やっぱり、年上の恋人に合わせようとしてるのかな? 俺は悠さんに甘えてばっかりだけど、夏木は逆にリュートさんを甘えさせてあげたいらしいから。 合わせると言うか、自然にそうなっていってるのかも知れない。 でもやっぱり、学生ノリの友達が傍にいないってのは、淋しいしつまんない! 夏木が先に立って入り口のドアを開けてくれる。 カランカランとドアベルが鳴って、店内のBGMが流れ聴こえた。 「いらっしゃいませ」 リュートさんがいつも通りの笑顔で迎えてくれて、それから更に頬を緩ませた。 「こんばんはー」 手を振ると、こんばんは、と返して笑ってくれる。 「おかえり、功太」 リュートさんの蕩けるような笑顔の先は、夏木だ。 「ただいま」 カウンターの跳ね上げ式扉を上げて、夏木がそそくさと奥の扉に入っていく。 なんだよー!そっけないなぁ。ただいまの後は抱っこギューでちゅーだろ。 「おじゃましまーす」 文句を言ってやろうと追いかけようとしたら、 「こら、皐月」 腕をぎゅっと掴んで抱き寄せられた。 「あ、悠さんだ!お疲れ様~」 「……はいはい、お疲れ」 抱きついてほっぺにちゅーすると、頭をよしよしと撫でられる。 「えへへ~」 見上げて今度は唇に口付けて、その胸に頬擦りした。 「皐月、夏木を呼んでおいで」 「うん。行ってくる!」 「俺が出すから1杯付き合えって伝えてくれる?」 「はい!おじゃまします」 リュートさんに断って、今度こそ夏木の後を追った。

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