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嫌いだ[1]

悠さんは───と見渡して、先に赤瀬さんと目が合った。 「こんばんは」 「…こんばんは」 返して、その二席向こうに座っていた悠さんを見つけた。 竜生は…帰ったのかな?見当たらない。 悠さんと赤瀬さんの間のイスに座ると、悠さんより先に赤瀬さんが反応した。 「何をしてたのかな?」 からかうような表情で、俺を通り越して悠さんを見てる。 「避難してました」 赤瀬さんは、ん?と首を傾げる。 「だって、悠さんの隣に竜生がいたから…。目の前でいちゃつかれたらヤだから、逃げてたんです」 答えると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。 「バカだな、皐月は。俺にはお前がいるのに、他の奴なんか目に入るわけがないだろ。オーナーとして接してるだけだよ」 「前に目の前でほっぺにチューとかされてんの見て、俺一人で泣いたんで」 後ろのニヤけた声は無視して、目の前の渋いおじさまに訴えかける。 「それは、優しい夏木君の方に逃げたくなるね」 赤瀬さんは苦笑混じりに答えてくれた。 「赤瀬さんこそ、リュートさん引っ込んじゃったけどいいんですか?」 「ああ、僕が行っておいでって言ったんだよ。マスター、裏が気になって仕事が手に付かないようだったから」 「おおっ、オトナだ!」 声を上げると大袈裟に見えてしまったらしく、赤瀬さんは可笑しそうに声を立てて笑った。 「赤瀬さんも林君も、リュートが腑抜けても変わらず通って頂いて、有り難いことです」 「いえいえ。ここには目の保養目的で通っているようなものですから」 「…まあ、マスターは所詮高嶺の花だから…」 「ありがとうございます。今後も当店が皆様の憩いの場になれるよう精進致します」 経営者の顔をして悠さんが話す。 それがなんだか格好良く見えて、イスを回転させるとその手にきゅっと掴まった。 「ん?機嫌治ったか?」 「別に、俺はちょっと浮気した旦那さんを許すぐらいの度量はあるんで」 「浮気なんかしてないだろ。お前こそ、夏木と2人で籠もりやがって。リュートがソワソワしっぱなしで、見てて可哀想なくらいだったぞ」 「えー?リュートさん、なんでそんなに心配なのかなあ?」 部屋に来た時もちょっと変だったし。 夏木のこと好きすぎておかしくなっちゃってんのかな? やっぱり、男の人が恋愛対象だと、ただの男友達って言われても心配になっちゃうのかな…?

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