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友達をやめる理由[2]
【悠Side】
「あ…の……」
腕の中の皐月が、小さく声を漏らす。
2人が一斉に目を向けると、皐月は体を硬くし、俺の顔を見上げた。
腕の力を緩めてやると、顔の向きに合わせて体を反転させ、二人に向き直る。
「あの…俺…夏木のこと、友達だって…」
「…ああ!友達だよなっ、俺ら!」
「リュートさんのことは、優しいお兄さんみたいに…」
「うん、僕も皐月くんのことは可愛い弟みたいに思ってるよ!」
皐月の言葉に2人は、大袈裟なぐらいに反応を示す。
「…思ってたんだけど、本当はそうじゃなくて……」
そして、聞きたかった言葉を否定されて、固まった。
皐月は自分のことだけでいっぱいいっぱいなようで、2人の様子に気づいていない。
「初めは、悠さんに捨てられちゃうって焦って、夏木と友達やめるって言ったんだ。でも、悠さんはそんなことしないって教えてくれて…」
聞いたかお前ら。
夏木と友達をやめないと俺に捨てられるなんて、意味が解らないだろう?
皐月はな、思考の飛躍が半端無いんだ。
一瞬でとんでもない方向に跳んでいくんだぞ。
考えさせる間を与えたら一体どんなことを思いついてしまうのか、想像も及ばない。
「だけど、その後よくよく考えて、やっぱり俺が夏木と仲良くしてたら良くないし、リュートさんにとってもやっぱり俺は目の前に居ない方が良いんだろうし、……悠さんとはずっと一緒じゃなきゃ嫌だけど、でもここに来なかったらもう、リュートさんには嫌な思い…… …夏木とは会社で会っちゃうから、少しはさせちゃうかもしんないけど、でも……」
ほら、な。
つらつらと語られた理由に、理解が及んだのは俺だけだ。
ただ、リュートの為にそうしたのだろうと言うことだけは、2人にも伝わったようだった。
「皐月くん、…その、僕が嫌な思い…ってのは……??」
「あっ、あのっ、……俺、鈍感でっ、すみませんでした!」
「えっ??」
リュートは訳が分かっていないようだが、『鈍感』という言葉に夏木は合点がいったようだった。
皐月は、俺が口止めをしたから、それを言わずに伝えようとしているのだろう。
「────リュート、覚 れるか?」
訊ねると、リュートは俺の顔を見上げ、そして額を押さえ息を吐き出す夏木を見た。
「…ごめん、俺の所為」
そして漸く、リュートも答えに辿り着いたようだ。
「えっ、だってそれは、僕が勝手に…。皐月くんも功太も悪くなんて…!」
「違う!俺が考え無しだったのが悪いんだ!」
皐月の目から、ボタボタッと涙が零れ落ちる。
ハンカチでそれを押さえてやってから、俺はなるべく冷たく聞こえないよう「そうじゃないだろう」と声を掛けた。
「誰が悪いか論議する場ではない。夏木、まずはお前の理解したことを発言してみろ」
皐月の涙にオロオロし出した夏木に白羽の矢を立てる。
お前の関与するところではない。
皐月を甘やかすのも慰めるのも俺だけの特権だ。
独占欲が強いのは、大人気ないのは重々承知だ。
母親たちが持つはずだった分まで、俺達に回ってきてしまったのかもしれないな………リュート。
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