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さっちんとミキ[2]

【悠Side】 席に戻ってカップを置くと、リュートが視線を上げる。 「ひゃあぁ~っ」 ミキの奇声に、更に夏木も顔を上げた。 サラダを置いた皐月を先に通して、「座る?」と声を掛けてみる。 「いっ、いえ!滅相もない!」 目の前で思い切り両手を振って断られた。 昔からリュートと2人で外にいると、女性からこういった視線を向けられることは良くあった。 お互い同性愛者だし興味は無いので相手をすることはないが。 それにしても、皐月が可愛くて目を引くのはともかく、夏木も世間では『イケメン』の域に達しているのか。 ……そうだな。言われてみれば容姿が整っていないこともないし、若者らしく爽やかでもあるし、…モテないこともないか。 まあ、夏木はリュートからの好意にすら気づかなかったぐらいだし、興味のない異性からなら尚更、気にも留めないことだろうが。 「…あのぉ…?」 なにか聞きたげに、ミキがおずおずと声を掛けてくる。 「あ、リュートさん、夏木。紹介するね。俺の高校の同級生。三木…なんだっけ、名前?」 ミキ、は苗字だったか…。 何故だか少しだけホッとする。 高校生の頃とは言え、皐月が女の名前を呼び捨てるような子であったと考えると、複雑な心境だ。 「…なんだっけじゃないよ。あの、三木(みき) 礼奈(れいな)です」 ミキが我々に向かって頭を下げる。 皐月は不思議そうな顔をして首をひねった。 「あれ?そんな名前だった?ヒロコとかじゃなかった」 「それ母さんの名前!てかなんでさっちんが知ってんの!」 「あははっ。そーだっけ?」 ミキの方が品に欠けるが、同じノリで会話をする2人はとても楽しそうだ。 少し前までは夏木とも見せていた学生ノリ、と言うやつが、夏木との時よりも幼く感じる。 高校生の頃の皐月か……。 可愛かったんだろうな。 思わず頬を緩ませていると、こちらへ顔を向けたリュートと目が合う。 「…兄さん、顔気持ち悪い」 ……余計なお世話だ。 「それよりヒロコ」 「だからヒロコは母親だっつの!」 「あはは、うんうん。でな、ミキの右から、夏木。会社の同期」 「夏木です。俺も広川と同い年」 夏木が手を差し出すと、リュートの眉がピクリと反応した。 ミキは気付かず笑顔の夏木と握手を交わす。 リュートの唇がツンと尖るのを見ると、俺は少し愉快な気分になって小さく笑った。 「で、こちらがリュートさん。俺のお兄さんみたいな人」 「こんにちは。僕は、その皐月くんの隣の大きい人の弟です」 表情を一転、リュートはいつもの接客用の笑顔を浮かべ、俺を示した。 ミキはまた、「ヒェェッ」と不思議な声を上げる。 「リュートさん綺麗だろー」 自慢気に皐月が笑うと、ミキは言葉も発せずにコクコクと頷いた。 「悠さんも、めっちゃくちゃカッコイイだろ!」 「うんうん!」 「おい、広川、俺は?」 「んー…。ミキ、夏木はこう見えてイイヤツなんだ」 「お…おおっ…」 「こう見えてってなんだよ。褒めるトコそこだけとか」 「なんだよー。じゃあイイヤツじゃないよーっだ」 若者3人はなんだか楽しそうだ。 皐月を通路側に座らせてやればよかったな。 大人はおとなしく見守ってやるか。

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