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実家にて[3]

お風呂から上がって居間へ戻ると、悠さんは、今度は母さんと一緒に俺の昔のアルバムを見ていた。 「あーっ、もう!」 恥ずかしくって取り上げる。 「悠さんは、今の俺より昔の俺の方がいいの!?」 「ん?昔の皐月も可愛いぞ」 「そう言うこと言ってるんじゃないじゃん!」 変な話だけど、恥ずかしいの半分、昔の自分に対する嫉妬心半分。 今の自分を可愛がって欲しくて、悠さんの胸にぎゅっと抱き着いた。 「お義父さんにやっておいで」 またそゆこと耳打ちする! 「しないよっ!」 「ところで皐月、体が温まってないぞ。ちゃんと良く浸かってきたのか?」 「ううん。悠さんに早く会いたくて、すぐに出てきちゃった」 ちゃんと浸からなきゃダメだろう、って怒られるかなと思ったけど。 悠さんは瞼を下ろして悩むみたいにおでこを手で押さえて、 「あー…」 なんか、唸ってるし。どうしたのかな? 不思議に思って見上げると、悠さんは父さんに訴えるように、変なことを言い出した。 「こういう可愛いことを度々言ってくるんですよ」 「何言ってんの!?可愛くないし!」 「……悠、一緒に寝るのは構わないが、嫁の実家で本番はするなよ」 「はぁっ!?父さんなに言ってんの!?この変態バカ親父!」 「こら皐月、お父さんに馬鹿なんて言っちゃダメじゃない」 母さんがビールをグラスに注いで父さんに渡す。 「悠さんもいかが?」 「お言葉に甘えて、頂きます」 悠さんが頭を下げると、母さんは悠さんにもビールグラスを渡した。 「母さん、俺には?」 悠さんの膝に座り直して手を差し出すと、母さんは隠し持っていたグラスをクスリと笑って渡してくれる。 「皐月ももうお酒を飲むような歳になったのねぇ」 なんて、しみじみ言いながら。 「俺だってもう25なんだけど」 「あら、25歳の大人の男は、膝に座って甘えたりしないものよ」 「~~っいいの!俺の席はここなの!」 「悠さんも重たいでしょ。甘やかさなくていいのよ」 楽しそうに笑いながら、おつまみをテーブルに出し終えた母さんはお風呂へ消えていく。 「…悠さん、重い?」 ちょっと心配になって振り返ると、悠さんは「重くないよ」って笑ってくれた。 「だけど、下りような?」 「えーっ、……悠さんが俺のこと邪魔だって言うなら下りるけど」 「邪魔じゃあないが…」 「じゃあここが良い」 「───わかりました」 観念して座り直させてくれた悠さんのほっぺに、ちゅっと唇を押し当てる。 「皐月…っ」 いつも落ち着いてる悠さんが焦ってるのが、なんだか面白い。 父さんは俺達を見て、ちょっと困ったような、呆れたような、どこか楽しそうな───複雑な顔をして、可笑しそうに笑っていた。

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